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其々の思い⑤

 季節が巡る。辰っちゃんと知り合って5度目の春を迎えた。辰っちゃんは2年前病院を辞め、救急救命士として救急車に乗っている。どちらも人命救助の仕事だ。前にも増して辰っちゃんは生きいきしている。俺は去年の春から消防官になった。消防学校の初任教育を終え、今消防車に乗っている。辰っちゃんと俺は別の消防署。だがいつか辰っちゃんと同じ救急車に乗りたいと思っている。一緒に人命救助に携わりたい。俺の切なる思いだ。借金を完全に返済した梨花と陽太さん。梨花は今専業主婦に戻った。家事を熟しながら福君の育児をしている。その福君もこの春から幼稚園に行き始めた。保育士不足を痛感している梨花。今保育士の勉強をしている。パートでいいから何時か保育士として働きたいと言っていた。梨花の旦那陽太さん。健康志向の強い食品作りに今携わってると聞いた。一戦を交じ終え、辰っちゃんちのベランダに出る。満点の星空が振ってきた。辰っちゃんが真っ直ぐに見てくる。瞳の奥から眩い光が見えた。
「なぁ佑、結婚しようか」
「えっ……」
「俺達男同士だぜ」
「うん、判ってる。養子縁組するんだ。お前苗字変えてくれよ」
辰っちゃんと結婚はしたい。だが色々問題もある。俺は悩んだ。だが俺は女と結婚する積りは微塵も無い。俺が添い遂げる相手は辰っちゃんだと思っている。辰っちゃんの姿を見て俺は消防官を目指し、そしてなれた。俺は辰っちゃんのこの言葉を待っていたのかも知れない。俺は頷いていた。
「俺がお前を必ず立派な救急隊員に育てる。そして生涯守っていくからな」
「うん、俺辰っちゃんに着いていく。ずっと……」
「愛してる。佑」
「俺も愛してる」
辰っちゃんに肩を抱かれた。唇が寄ってくる。軽く触れ合った。舌が深く入ってくる。俺達は舌を絡め合った。背中に回された腕に力が籠もる。カラダが蕩けそうになった。静かに唇が離れる。永いキスが終わった。
「辰っちゃん、俺んちに住もうぜ。古いけどリフォームしてさ」
「そうするか。金は俺が出すからな」
「俺も出すよ。遺産金少し残ってるしさ」
「判った」
忙しい日が始まる。俺達はリフォームプランを立て始めた。業者が決まり打ち合わせが終わる。工事が始まった。1階を減築して2台分の駐車場をつくる。水回りを全面交換。2階は間取り変更して広めの主寝室と2つの居室を作る。ひとつは和室にした。時が流れる。俺達の新居が完成した。引っ越しが始まる。家具家電が運ばれてきた。収納が終わる。カーテンが取り付けられた。辰っちゃんはもうご両親にはカミングアウトを済ましている。俺も2度程お会いした。今後の事も有る。俺達は其々の署長に結婚の報告をする事にした。今俺は署長室の前にきている。心臓が高鳴る中俺はドアをノックした。
「塚本です」
「おお入れ」
俺は中に入る。署長の前に行くと敬礼した。
「署長、俺今度結婚します」
「おお、おめでとう。相手は誰なんだ」
俺は深呼吸する。署長に視線をぶつけた。
「桐生救急救命士です」
「えっ郷町消防署の桐生かよ。おっ男だぜ」
「ハイ、そうっす。俺は桐生佑になります」
署長の顔が曇る。目を瞑った。僅かに沈黙に包まれる。署長が目を開けると笑みを浮かべてきた。
「判った。総務には俺から話を通しておくからな。お前救急隊員希望してたのはあいつの影響なのか」
「ハイ、そうっす。俺尊敬してますし凄ぇ愛してます」
「熱いぜ。でもあいつ救急救命士としては凄腕らしいからな。郷町署の署長とは俺同期なんだ。色々話は聞いてたぜ。あいつから学べよ」
「ハイ、ありがとうございます」
俺は深々と頭を下げる。署長室を後にした。胸の痞えが下りる。俺は早速辰っちゃんにメールした。
”理解して貰った”
程なくしてスマホがメール着信を報せる。辰っちゃんからだ。
”こっちも上手くいったぜ”
そんな或る晩、立谷親子を誘い、海浜公園に着ている。時刻は午後7時。イルミネーションに灯りが燈った。ドームを潜る。福君の目が輝いていた。ハート型のオブジェの前に立っている。立谷親子3人でボタンを押した。後に灯る樹木のイルミネーションの光が森が躍動しているように表情を変える。今度は俺と辰っちゃんがボタンを押した。今度はゆっくりとした歩調でデッキに上がる。眼下に見事な夜景が広がっていた。
「梨花、陽太に話があるんだ」
辰っちゃんの声に2人は頷いた。
「実は俺達ゲイなんだ。今度結婚することにした」
辰っちゃんの声に2人は澄ました表情を浮かべている。微かに顔を綻ばせた。
「何となく判ってた。ねぇ陽太」
「うん、もしかしたらそうじゃないかって言ってたんすよ」
梨花の言葉に陽太が応える。陽太に抱かれてる福君がにっこり微笑んだ。
「そうかぁ気付かれてたのか」
「2人見てると凄ぇ幸せそうに見えたから……」
辰っちゃんの声に梨花が応えた。
「おめでとう」
梨花と陽太の声が重なった。
「俺んち新居用にリフォームしたんだ。今度簡単なパーティーするから着てくれよ」
「勿論行かせて貰うわ。あっそうだ私ケーキ焼いて持ってくね」
俺と色々有った梨花。今こうして家族ぐるみで付き合っている。素直に嬉しく思った。
 時が僅かに流れる。吉日に養子縁組を済ませた。俺は桐生 佑になる。玄関には桐生 辰哉、佑と記された表札が掛けられた。今日儀式と細やかな祝いの宴が行なわれる。出席者は立谷家族と辰っちゃんの両親。それに豪町消防署の倉田署長、凱坂消防署の益岡署長だ。
 昼下がりの午後からから料理の準備を始める。キッチンに2人で立った。トントントン小気味欲包丁がまな板を叩く。鯛にエビなどめでたい食材も使った。色とりどりの祝い膳と可愛い子供膳が完成する。キッチンカウンターの隅には薔薇の花を生けた。赤と白そしてゴールドに近い黄色。花言葉は愛情、尊敬そして絆だ。雲の隙間から優しい光が部屋に射している。宴の段取りが整った。風呂に入りカラダを清める。を締め込んだ。其々消防の制服を身に着ける。階級章を装着した。時刻は4時を回っている。インターホンが鳴った。ドアを開ける。辰っちゃんのご両親が立っていた。
「久しぶりだな。佑君」
「ご無沙汰してます」
親父さんの声に俺は応える。お袋さんがにっこりと笑みを浮かべた。
「父さん母さんこっちっす」
辰っちゃんの声にご両親が頷いた。2階に上がり和室に入る。お線香に火をつけた。仏壇の前に座る。厳かな気分になった。俺達は合掌する。俺の両親に結婚の報告をした。
「佑ちゃんこれからは私達を親だと思っていいからね。辰哉を宜しくね」
「ハイ俺の方こそ宜しくお願いします」
お袋さんの声に俺は応える。親父さんが遺影に目を遣った。
「佑君をお預かりします。必ず幸せにしますからね」
傍らに居る辰っちゃんとお袋さんが大きく頷いた。辰っちゃんと視線が交差する。辰っちゃんが指輪ケースからマリッジリングを取り出した。俺の左手が握られる。指輪が嵌められた。今度は俺が辰っちゃんの手を握る。俺は辰っちゃんにマリッジリングを嵌めた。刻印はpaa ana(絆)と刻まれている。4つのぐい飲みに酒が注がれた。思いを込める。俺達は仏壇の前で飲み干した。俺達は立ち上がる。仏壇に向って礼をすると和室を後にした。西の空に陽が傾き始める。
西日
空が茜色に染まった。インターホンが鳴る。次々と来客が訪れた。ダイニングテーブルにお膳とケーキが並べられる。俺達の宴が始まった。テーブルを囲み、グラスにビールが注がれる。福君のカップにはジュースがそそがれた。
「辰哉に佑、おめでとう」
倉田署長の声が上げる。みんなのグラスがカチンカチンと触れ合った。
「これお前らの手作りか」
「そっすよ。どうぞ召し上がってください」
益岡署長の声に辰っちゃんが応えた。
「美味ぇな。彩りもいい」
「ホント美味しいわ」
倉田署長の声にお袋さんが応えた。福君がケーキを見ている。今度は陽太に目を遣った。
「梨花、福君がケーキ欲しそうだぜ。切り分けてくれよ」
「バカね。これはウエディングケーキでしょ。貴方達が切るのよ」
俺の声に梨花が言い切った。
「こんな事あるかと思ったから用意してきたよ」
梨花にナイフを渡される。紅白のリボンが巻かれていた。俺と辰っちゃんが立ち上がる。ナイフを手に取るとケーキに入刀した。梨花がケーキを取り分けみんなに配る。福君がにんまりしながら食べていた。談笑が始まる。酒を喰らい料理を食べた。和やかな時間が流れる。2人の署長が何やら語り合っていた。
「何こそこそ話してんすか」
「いや何でもねぇ。昔話してたんだ」
辰っちゃんの声に益岡署長が応える。その言葉は歯切れよくなかった。視線が2人に集中する。梨花がビールをグビッと飲むと2人に視線を飛ばした。
「あっもしかして署長さん達出来てたんじゃないですか」
梨花の大胆な発言に2人の署長はたじろいでいる。だが否定はしなかった。
「若気の至りだ」
益岡署長がぼそっと声にした。
「えにし、みてぇな物を感じたんだ。俺達の部下がこうなったんだからな」
倉田署長の声に益岡署長が頷いた。
「辰哉に佑、絶対幸せになれよな」
「ありがとうございます」
益岡署長の言葉にに俺と辰っちゃんの声が揃った。話が盛り上がる。和やかな内に宴が終わった。其々が岐路に就く。俺と辰っちゃんが2人きりになる。ソファーに並んで座った。2つのグラスに氷と焼酎と水をを入れる。ひとつを辰っちゃんに渡した。
「辰っちゃんみんな良い人だな」
「うんそうだな。幸せにしてやるからな」
「うん、俺も辰っちゃんを幸せにするぞ」
辰っちゃんに肩を抱かれる。唇が寄ってきた。薄く生えている辰っちゃんの無精髭を擦る。唇が触れ合った。舌が入ってくる。俺達は舌を絡め合った。色んな思いが頭の中を駆け巡る。ちょびっと切なくなった。



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[ 2016/06/05 16:14 ] 其々の思い | TB(-) | CM(0)

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