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髭の僧侶③

 翌朝目覚めると将崇さんはもう居なかった。階下に降りるとまな板を叩く包丁の音が耳に響き味噌の良い香りが漂ってくる。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。よく眠れたか」
「う、うん」
さり気ない朝の会話。昨晩結ばれた将崇さんと俺。ちょっぴり照れくさい。そして同じ朝を迎えられた大きな歓びを感じる。
「こっちおいで」
「うん」
俺は台所に入る。将崇さんは包丁を置くと抱き寄せてくれた。唇か軽く触れ合う。
接吻 (1)
舌が挿いってくる。抱きつき舌を絡めた。唇がそっと離れる。
「将崇さん、やべぇよ。俺勃ってきっちまった」
「バカやろ」
にっこりほほ笑むと俺の股間を小突いた。
「さぁ飯にするぞ。運ぶの手伝ってくれよ」
「ハーイ」
食事を済ませてお茶を飲みながら居間で寛いでいる。畳の部屋。何げに温もりを感じた。
「朝のお勤めするけど見るか」
「うん見たいっす」
俺達は本堂に向かう。そして朝のお勤めが始まる。蝋燭だけの灯りの中、将崇さんの唱えるお経に耳を傾けながら心静かに祈りを捧げた。厳粛な雰囲気に包まれる。そして穏やかな気分を味わえた。
「将崇さん行きたいところ有るんだ」
「ん、判った」
無言のまま歩く。着いたのは亮一の墓。
「亮一、紹介する。俺の彼氏の将崇さんだ。お前の分まで幸せになるからな。ねっ」将崇さんを見る。
「亮一君、信勝の事は俺が守るから安心してゆっくり眠ってくださいね」
俺達は線香を手向けた。将崇さんがお経を唱え始める。しんとしたお寺の中で厳かに将崇さんの声が響いた。一緒に寺の掃除をする。法事、写経教室、法話会、俺は雑務を手伝った。小さなお寺だけどそれなりに忙しい。結局この日は夕方迄お寺の手伝いをする。俺は将崇さんと一緒に居られる事がこのうえなく嬉しかった。
「じゃぁ俺そろそろ帰るな」
「そうか……」
玄関迄見送ってくれた。軽くキッス。温もりを感じる唇が触れてきた。
「じゃぁまたな」
「うん」
俺は帰路に付いた。帰り道昨日から今日の出来事が頭の中を駆け巡る。心が温かくなっていくのを覚えた。
[ 2015/03/14 20:21 ] 髭の僧侶 | TB(-) | CM(0)

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