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えにし③

 今日俺達は警察から表彰される。夏の眩い朝陽を浴びながら警察に向かった。暑い日差しがやけに心地よく感じる。
木漏れ日 (3)
俺達は香澄ちゃん再開できた。表彰式が終わる。数社のマスコミが俺達を待ち構えていた。
「ちょっとお話聞かせて貰っていいですか」
俺達3人は無視して通り過ぎようとした。執拗いキャスター達。俺達は仕方なく立ち止まった。
「どんな状況で愛を告白されたんですか」
事件のことは殆ど無く質問は俺達のことばかりだった。苛立つ俺。視線が好奇の目に見えた。矢継ぎ早に繰り出されるキャスターの言葉。偏見はないと思っている。だがあまり語りたくないと思ったのは事実だ。
「俺はこいつを生涯守っていく。それだけです。行くぞ」
俺は言い切るとその場を立ち去った。マスコミ連中の痛い視線を感じる。この日を境に俺達と香澄ちゃんの付き合いが始まった。時々俺んちまで香澄ちゃんは彼氏の芳樹君と一緒に遊びにくる。元春の手作りスイーツを食べながらお茶をした。香澄ちゃんが目をキラキラさせながら色んなことを話してくる。時々俺達のことを聞いてくるけど嫌ではなかった。寡黙だった元春も良く喋る。明るい声を上げながら振舞った。俺の部屋には今ダブルベッドが置かれている。元春の部屋はゲストルームになった。香澄ちゃん達がたまに泊まりにくる。元春と香澄ちゃんの手料理を食いながらみんなで騒いだ。仕事に家庭。俺達の生活は充実している。鈍った躰を鍛えなおす為にジムにも通い始めた。この前一緒に行ったハッテンビーチ。逞しい男達が一丁で日焼けしている。俺は初めて六尺を締めてみた。前袋から元春の濃い陰毛がはみ出ている。俺達もシートを敷くと日焼けを始めた。
日焼けS
「元春タイプいるのか」
元春がキッと俺を睨み付ける。
「ここににいるよ」
ぎゅっと俺の前袋が握られた。
「悪かったな。おかしなこと聞いて……」
オデコにチュッとした。
「兄貴ぃ帰ってしようか」
「あぁそうだな」
俺は今に嵌っている。俺達は六尺を常用するようになった。この前初めて元春に掘られた俺。感じてしまった。俺の中で元春の存在が大きくなっている。掛け替えの無い相手に巡り合えたことを俺は感謝した。時が巡る。また夏を迎えた。俺の中に女は微塵もない。あるのは元春だけだ。今日俺達はささやかな結婚式を挙げる。昨日俺と元春は両家の墓前で報告した。今朝役所で入籍を済ませる。躰を清めると真っ新なを締め込んだ。白の乗馬ズボン、鯉口シャツ、腹掛けを身に着ける。上にはやはり白の半纏を纏った。
「元春、いよいよだな」
「うん」
「お袋の望み通り元春が俺の連れ合いになったんだな」
「うん、小母さんから母さんになった」
元春と視線がぶつかる。瞳の奥から眩い光を放っていた。夕刻6時インターホンが鳴る。来賓で立会人の香澄ちゃんと芳樹君が見えた。
「いらっしゃい」
「おめでとうございます」
俺の声に香澄ちゃんが明るい声で応える。芳樹君が真っ赤なバラの花束を元春に渡した。
「ありがとな」
俺は言葉を返した。元春が俺の隣で微笑んでいる。2人をリビングに通した。ダイニングテーブルには元春手作りの料理が並んでいる。俺達はテーブルを囲んだ。
「カッコいっすね」
芳貴君の声。
「ホントね。庭師って感じでとてもいいわ」
香澄ちゃんが声にする。
「始めるぞ」
俺が声を上げた。結婚証明書に俺と元春が署名する。立会人欄には香澄ちゃんと芳貴君が署名した。俺は元春の手をとる。左手の薬指に指輪を嵌めた。今度は元春が俺の左薬指に指輪を嵌める。刻印はvincula”絆”俺達は2人の立会い人の前で正式に連れ合いとなった。
「ねぇキスはしないの」
「そうだよな。結婚式ってキス付き物だもんな」
俺達は立ち上がる。静かに唇を合わせた。
「わぁ素敵……」
香澄ちゃんと芳樹君の拍手が部屋に鳴り響いた。4つのグラスにビールが注がれる。カチンと触れ合った。
「おめでとう」
「お幸せに……」
2人の言葉が優しく耳に響いた。料理を食らい酒を飲む。話も弾んだ。
「俺達、元兄ぃとヒデ兄ぃ見てるといっぱい元気貰ったもんな」
「そうよね」
2人は目を輝かせながら色んなことを語ってくれた。
「実はさ俺達報告あるんだ」
「えっ何だよ」
俺と元春は目を合わせた。
「ジャーン俺達こいつが卒業したら結婚します」
「おめでとう」
俺と元春の声が重なった。
「もう1回乾杯するぞ」
俺が声を張り上げる。4つのグラスが触れ合った。
「元兄ぃみたいな良い奥さんにならないとね。花嫁修業に押しかけるからね」
「おお来てくれよ」
和やかな雰囲気の中宴が終わった。
「泊まってくか」
「今夜は止めときます。2人の初夜だからな」
俺の言葉に芳貴君が声を返した。玄関まで見送る。2人は仲睦まじく帰っていった。バスジャック。あの事件が縁となり俺達は仲良くなった。俺のことをヒデ兄ぃと元春のことを元兄ぃと慕ってくれる。その2人が今度結婚する。あの2人なら暖かな家庭を築けるだろうと俺は思った。
[ 2015/06/21 13:35 ] えにし | TB(-) | CM(0)

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