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組子の家①

参照:組子とは、簡単にいうと釘を使わずにを組み付ける技術です。 飛鳥時代から長い年月をかけて磨きぬかれた木工技術と言われてます。伝統的な技術組子。職人達の情熱により受け継がれてきました。欄間、照明器具、屏風などが作られています。

 俺は知哉、一級建築士をしている。身長171㌢で29歳の髭坊主。現場仕事で鍛えたガタイは良いと言われる。今度義父さんさんの経営する会社に出向することになった。だか俺はこいつを父親とは認めていないし、血縁もない。あれは俺が5歳の夏だった。
「知哉、今度の日曜遊園地行こうか。母さんの勤める会社の社長が連れてってくれるって言うから……綾香ちゃんって言うお嬢ちゃんも来るから仲良くするのよ」
「うん」
母さんの声に俺は応える。無邪気に嬉しかった。遊園地なんて久しぶりだったから……
日曜日家の前に車が停まる。俺と母さんは後部座席に乗り込んだ。車が動き始める。30分程で遊園地に着いた。バイキングに回転木馬そしてジェットコースター。3つ年上の綾香姉ちゃん。俺達は直ぐに仲良くなり、心の底からはしゃいだ。ランチに頂いたキッズハンバーグ、売店で買ってくれたソフトクリームそしてジュース。凄く美味しかった。この日を境に家族ぐるみの付き合いが始まる。海、夏祭り、フィールドアスレチック。色んな所に連れて行かれた。
「ねぇ知哉、瀬戸小父ちゃん知哉のお義父さんにどうかな」
「うん、優しいしいいよ。綾香姉ちゃんとももって遊びたいし……」
母さんの言葉に俺は応える。そして母さんは望月社長と秋に結婚した。俺達の新生活が始まる。母さんは会社を辞め、家に入った。俺は保育園から新居近くの幼稚園に移る。新たに出きた友達、綾香姉ちゃん。穏やかな時が流れ始める。クリスマス、年末年始を一緒に過ごした。正月に貰ったお年玉。結構な額が入っていた。義父さんと中々言えなかった俺。初めて言えた時頭を撫でられる。優しく抱きしめられた。冬の荒々しい風が鎧戸をガタガタと揺する。義父さんが豹変した。
「知哉……」
リビングに俺のおもちゃが1つ転がっている。それを見て義父さんが罵声を上げた。
「ご、ご免なさい。今片付けます」
今まで怒られた事が無かった。義父さんは鬼のような形相を浮かべている。マジ怖かった。毎日のように怒鳴られる俺。目からな涙がボロボロ零れる。俺を庇う母さん。今度は夫婦喧嘩が始まる。俺と綾香姉ちゃんはカラダをブルブル震わせた。虐待が激しくなる。些細なことで怒鳴られ俺は手を上げられた。泣きじゃくる俺。すると更に激しく苛められた。そんな或る日の夜。義父さんが帰宅する。俺は綾香姉ちゃんの部屋に逃げ込んだ。階段を登る足音が聞える。ドアが開けられた。
「知哉……」
「止めて父さん」
義父さんの声に綾香姉ちゃんが制する。俺は綾香姉ちゃんに抱き付いた。
「おめえも遣られてぇのか」
綾香姉ちゃんの頬にビンタが飛んだ。綾香姉ちゃんが涙を溜めている。綾香姉ちゃんに目を遣った。
「綾香姉ちゃん泣いちゃ駄目だ。もっと遣られる」
「何ぃ」
俺の声に義父さんが声を張り上げる。俺は抱き上げられた。外に連れ出される。物置に入れられ施錠された。季節は冬。寒さが襲ってくる。涙が頬を伝ってきた。この日を境に俺は貝になる。済みません。ご免なさい。もうしません。必要以外が事は言わなくなった。ただ大人しく虐待される。涙も流さなくなった。暴言、殴打そして蹴り。俺は虐待され続けた。そんな或る日曜日。綾香姉ちゃんとアニメ動画を見ていた。
「チャンネル替えるぞ」
「えぇー見てるのに……」
義父さんの声に綾香姉ちゃんが応えた。義父さんが俺に視線を飛ばしてくる。その顔付きはマジ怖かった。
「なんて顔してんだ」
俺は抱き上げられる。表に放り出された。中から鍵が掛けられる。靴も履いていないし、ジャンバーも着ていない。外は昨晩降った雪が積もっている。
雪景色 (2)
寒さに俺は打ちひしがれた。
「義父さん、ご免なさい。入れてください」
義父さんと母さんが言い争っている。だがドアは開かなかった。俺はトボトボ歩き始める。向っていたのは良く遊んでいる近所の神社。拝殿脇にポツリと座った。雪道を歩いてきた俺。ソックスがびっしょり濡れている。寒さがカラダの芯に響いてきた。
「知哉君どうしたんだ」
神社の小父ちゃんが声を掛けてきた。
「お、小父ちゃん」
涙がボロボロ零れてきた。
「風邪引いちまうぞ」
俺はおんぶされる。傍らにある神社の小父ちゃんちに入った。
「うちの子のだから少し大きいかもしれないけど……」
小母ちゃんがソックスを履き替えさせてくれる。暖かいミルクを出してくれた。涙が零れてくる。ミルクを飲みながら俺は激しく嗚咽した。
「あら…知哉君ちょっといい」
小母ちゃんが声を上げる。俺の着ていたトレーナーをたくし上げられた。小母ちゃんが顔を曇らせる。小父ちゃんに目を遣った。
「お父さんこれって……」
「そうだな……」
ジャンバーを着せられる。俺は小父ちゃんにおぶられ警察へ向った。義父さんが牢屋に入ると言う。だが保釈されて家に戻る前に俺は施設に入居する事になった。真冬のドンヨリした空が広がっている。迎えの車がやってきた。母さんに抱き締められる。俺はしがみ付いた。
「絶対向えに行くから……」
「うん」
母さんの声に俺は応える。綾香姉ちゃんの目に涙が浮かんでいた。季節が巡る。母さんは時々面会に来てくれた。
「ゴメンね。母さんが義父さんと一緒にならなかったらあんたをこんな目に合わせることなかったのにね……」
「母さん、おっ俺平気だよ」
何度か綾香姉ちゃんも来てくれた。お土産に貰った大好きなバナナジュース。凄く美味しかった。そんな或る日、母さんのおなかが大きく成っている。赤ちゃんが出来たみたいだ。複雑な思いが過ぎる。同じ母さんの子供なのに俺は施設、弟達は母さんと一緒に住んでる。だが俺は母の日には一輪のカーネーションを送り続けた。時が流れる。俺は中学を卒業すると就職をする道を選んだ。就職先は倭(やまと)工務店。住み込みで良いと言われた。俺は大工になる。母さんの気持ちは判らない。だが一杯稼いで俺が自分の家を建てる。また母さんと一緒に住みたかった。施設に入居して10年余り経過する。仕方ないとは思うけど俺は迎えに来られなかった。
 季節は春。公園の桜が満開になっている。
桜 (8)
倭工務店の家族は3人。社長の二階堂高志さん奥さんの真理さんそして息子の隆児さんだ。隆児さんは22歳大学を卒業したばかりで家業を継ぎながら一級建築士を目指していると言う。学生時代はボクシングをしていたと聞いた。着衣の上からでも逞しさが伺える。爽やか過ぎる笑顔を時折向けてきた。二階堂家は結構大きい。立派な本瓦の家だ。重厚な玄関。庭も良く手入れされている。広いリビング。隣接してるキッチンはオープンタイプになっている。奥にあるのが二階堂御夫妻の寝室らしい。2階には4つの部屋がある。俺は6畳の和室を与えられた。僅かな荷物を収納する。母さんが用意してくれた寝具を押入れに入れた。カーテンを取り付ける。俺の引っ越しは終わった。廊下を挟み隆児さんの部屋が有る。他の2部屋は空いてると言う。以前は3人の人が住み込んでたと聞いた。
 時刻は夜7時を回っている。俺達はテーブルを囲んだ。奥さんが料理を運んでくる。俺の好物のハンバーグだった。
「いっぱい食べてね。お替りもあるから……」
「ありがとうございます」
奥さんの声に俺は応える。社長が俺を見てきた。
「一杯飲むか」
「えっ俺未成年っすよ」
「一杯だけだ」
グラスにビールを注ぎ合った。
「入社おめでとう。頑張れよ」
社長の声に4つのカチンと触れ合った。ハンバーグを口にする。濃厚な肉汁が口の中に広がった。
「凄ぇ美味いっす」
俺が声を上げる。みんなの視線が眩しく感じた。
「実家と思ってくれて良いんだからね」
「あぁそうだ。仕事では扱くけど家では甘えていいんだぞ」
「うん、ありがとうございます」
俺の目から涙が零れる。一滴頬を伝った。久しぶりの家庭の味。無茶苦茶な暖かさに包まれた。
 俺の新生活が始まる。社員、職人さん達は良くしてくれた。隆児さんは弟のように接してくる。色々と教わった。
「お前女とは経験あるのか」
「無いっす」
「じゃぁ今度犯らせてやるからな」
隆児さんには複数のセクフレが居ると言う。俺は16歳で童貞を捨てた。この日を境に隆児さんはたまに誘ってくれる。俺は色んな女を抱いた。季節が流れ、柔和な秋を迎える。爽やかな風が頬を撫でてきた。
[ 2016/06/26 19:13 ] 組子の家 | TB(-) | CM(0)

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