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続・淫乱旅行⑧

 4月1日金曜日。Forte-Cが始動する。時刻は8時48分。春の青空が広がっている。
空 (11)
営業所が入ってるビルのロビーに行くと30歳台半ば位の女性が立っていた。
「待ったか」
「私も今来た所だからね」
サト兄ぃの言葉に女性が応えた。Forte-Cの営業は2階に有る。エレベーターで2階に昇った。サト兄ぃがカードキーを差込み中に入る。灯りを燈した。正面の白い壁にチャコールグレイでForte-Cと記されたサインがある。ダウンライトがそのエントランスサインを照らしていた。その傍らには電話が置かれている。御用の方は#12を押してくださいと書いて有った。左右に其々ドアがある。サト兄ぃは左のドアをまたカードキーで開けると中に入った。初めて入ったForte-C。中は広く感じる。奥の窓際には少し大きめの営業所長のデスクが有った。その前には4つのデスクが2列に並んでいる。窓からは春の柔和な光が射していた。
「紹介するな。バックヤードをやってくれる。川辺博美、以前営業部で一緒に仕事していた。こいつが営業の西矢嘉和、仲良くなってくれよな」
「西矢です。宜しくお願いします」
「川辺です。こちらの方こそ宜しくお願いします」
俺達は挨拶を交わした。
「このデスクが西矢でこっちが博美な」
「判りました」
サト兄ぃの声に俺と博美さんの声が重なった。
「給湯室に本社と同じコーヒーマシン有るからアイスコーヒー淹れてくれるか」
「判りました」
サト兄ぃの言葉に博美さんが応える。給湯室に入った。
「西矢は、ミーティングルームに入ってろよ」
「ハイ、判りました」
サト兄ぃの声に元気良く応える。俺はミーティングルームに入った。大きなテーブル席の真ん中辺りにちょこんと座る。真っ白な壁。何も書かれてないホワイトボードが目に飛び込んできた。程なくして博美さんが入ってくる。アイスコーヒーをテーブルに置くと俺の隣に座った。初めて見る博美さんが隣に居る。僅かな緊張感を覚えた。
「待たせたな。改めて言う。就職おめでとう。期待してるからな」
サト兄ぃが大きな紙袋2つと小さな紙袋を1つ抱えてミーティングルームに入ってくる。俺達の前へ座った。ネームプレートを兼ねた社員証とカードキーが渡される。何気なく重みを感じた。
「ユニフォームだ。営業に出るときはスーツが多いけどショールームではこっちだ。博美もショールームも遣って貰うからな」
サト兄ぃが声を上げる。俺達は紙袋を開けた。色違いの3枚のポロシャツとハーフパンツに5足のソックス。それに2足のスポーツシューズが入っている。ポロシャツの背中にはForte-Cのロゴが入っていた。
「着替えてこいよ。入り口脇にロッカーがある。女子が右側で男子は左側だぜからな」
俺達はロッカーキーを受け取る。ミーティングルームを後にした。着替えるとミーティングルームに戻る。俺と博美さんはサト兄ぃの向い側に座った。サト兄ぃが俺を真っ直ぐに見てくる。真剣な眼差しを送ってきた。
「西矢、いや嘉和、博美を俺は信頼している。言っとくぞ」
サト兄ぃの言葉の意味合いが判る。俺は頷いた。
「博美、俺の事は多分誰からか聞いて知ってると思う。こいつも同じだ。嘉和と俺は付き合っている。一緒に住んでるんだ。このことは会社には言っていない。機会を見て報告する積もりだけどな」
博美さんが一瞬たじろぐ。直ぐに冷静な表情を浮かべた。
「判ったよ。私の胸のうちに仕舞っておくからさ」
博美さんがぽつりと声にする。この声は輝いて聞えた。
「ちょっと着いてきてくれ」
サト兄ぃの声に俺達はミーティングルームを出る。隣室へと入るとサト兄ぃは灯りを燈した。其処には別世界がある。並べられたトレーニング器具の数々。バーベル、マルチジム、バイクなどが並んでいる。ウエアにシューズが飾られていた。駆使した照明の技術が商品達を輝かせている。傍らにある商談スペース。高級そうな床材を浸かっている。並べられた2つのテーブルセット。柔和な灯りに包まれている。宛らホテルのラウンジにすら見えた。
「お客様はそこの出入り口は其処だ。担当者は其処のカウンターで待機していることになる。カウンター裏にはデスク置かれていた。カウンター後方部の棚には数々のプロテインと色々な茶器、グラスが並んでいる。棚の下には冷蔵庫と珈琲マシンが設置されていた。その脇にある小さな器具。中を開けるおしぼりが詰まっていた。サト兄ぃがカウンターに入る。プロテインシェーカーに牛乳とプロテインを入れるとシェークした。3つの小さなガラスコップに入れる。カウンターに並べた。
「飲んでみろよ」
サト兄ぃの声に俺と博美さんがプロテインを飲んだ。仄かな甘味が口の中に広がる。プロテインが食道を伝って下りると胃の中へと納まった。
「凄ぇ美味いっす」
俺が声にする。表情が緩んだ。
「最近はこんなのも有るんだ」
「ああこれはキャラメル味だ。今はもっと色んなのが有るんだぜ」
博美さんの声にサト兄ぃが応える。同時にサト兄ぃは後のガラス棚を指差していた。ブラインドをあげる。窓ガラスにはForte-Cと大きな文字が入っていた。俺達は事務所に異動する。其々の席に着いた。プリントが渡される。IDと初期パスワードそれに俺用のメールアドレスも既に設定されていた。
「パスワード変更しておけよ」
「判りました」
サト兄ぃの声に俺と博美さんが応える。パソコンを起動した。
「博美は前に使ったことあるから判ると思うけどな。多少変わってる所もある。嘉和は実際使ってみないと判らないと思うが参考までに見て置けよ。弄ってみてもいいからな
」其々マニュアルが渡される。営業のフォルダを開く。見積書、契約書、日報等各種書類が収められていた。カタカタキーボードを俺は叩き始める。博美さんもマニュアルを見ながらパソコンを弄り始めた。新しいオフィスで好きな人と仕事する。思わず笑みを浮かべてるいた。
「ちょっと出掛けてくるな。嘉和これお前にやるな。俺の営業ネタ帳だ」
分厚い大学ノートを渡された。
「後の時間は自習だ。パソコン勉強してもいいし、トレーニングしてもいい。自由にしてくれ。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
サト兄ぃの言葉に俺と博美さんが元気良く応える。渡された大学ノートに目を通した。人の心理にタイプ。いろんな事が書かれてある。俺は夢中になって読み漁った。時が経過する。時刻が12時に迫ってきた。
「嘉和君、お昼どうする」
「そっすね。弁当でも買ってきますか」
その時だった。博美さんのデスクの電話のベルが鳴る。博美さんが受話器を上げ、電話に出た。
”えっ頼んでないですよ。あっそうですか。今行きます”
「所長がうな重頼んでくれてたみたい」
博美さんがドアを開けた。
「あっ済みません。こっちまで運んで貰って良いですか」
「いいですよ」
博美さんの声に鰻屋が応えた。
「ショールームで食べようか」
「いっすね」
ショールームのテーブルにうな重、肝吸い、お新香が並べられる。鰻屋がキョロキョロしていた。
「こんな所出来たんですね。自分もジム行ってるんで興味あるんですよ。パンフレットなんてあるんですか」
「ありますよ」
鰻屋の言葉に俺は応える。パンフレットを渡した。
「あっ其処からも出れますよ」
俺は声を上げる。鰻屋がショールームの出入り口から出て行った。
「こんな効果もあるんだね」
冷たいお茶をトレーに乗せた博美さんが声を上げた。
「さっ食べよう」
「うん」
俺と博美さんが急接近する。色々と話してくれた。博美さんは5年前寿退社する。だが半年前旦那さんが交通事故で他界した。仕事を探し始めた博美さん。そんな時人事部の同期から連絡が会ったと言う。そして再入社を決めた。
「もしかしてあのノートにも書いてるかも知れないけど所長がこんな事言ってたんだ。仕事は1人では出来ない。人の力を借りる必要があるってね。営業が仕事を取ってきてもそれに付随して色んな仕事がある。だから人の力を借りる能力を養わなければならないってね。私達が何かミスしても絶対怒らなかったよ。済まん俺の言い方悪かったねってね。だから私達所長に頼まれたことは成し遂げたんだ」
サト兄ぃの知らない部分が見えてくる。俺が更に好きになったのは間違いない。それにサト兄ぃは仕事が嫌いだったと言う。だがノルマは必ず達成していたみたいだ。
「私が入社した時はもうゲイだってカミングアウトしていた。でも誰も変な目で見てなかったよ。仕事も出来たし性格も良かったからね。女の子の誕生日には花束買ってきてくれたんだ。キュンキュンしてる子も居たの知ってるよ」
博美さんが俺に視線を飛ばしてきた。
「所長ね。何度も昇進の話を断ってる。だけど今回は受けた。多分それは嘉和君が居たからだと思うよ。遠距離恋愛だったんでしょ」
「うん、逢えるのは精々月に1~2度だったからね」
博美さんの声に俺は応えた。
「きっと何時も一緒に居たかったのね」
博美さんが声を上げる。その言葉が俺の心に沁みた。
「珈琲淹れようか……」
「あっマシンの使い方教えてくれる」
博美さんの声に俺は応えた。本音で俺にぶつかってくる博美さん。ちょっと男勝りで姉御肌に感じる。だが俺には心地好く感じた。夕刻サト兄ぃが帰社する。俺達に視線をぶつけてきた。
「博美、新規代理店の契約書だ。処理しといてくれ」
「さすがね」
サト兄ぃの言葉に博美さんが応えた。
「凄ぇサト兄ぃ……じゃなくって所長」
「へぇサト兄ぃって呼ぶんだ」
博美さんが俺の言葉じりを捉える。顔が綻んでいた。顔が熱くなってくる。俺は俯いていた。
「嘉和って可愛い。弟みたいだよ」
博美さんが声を上げる。博美さんが何時の間にか俺の事を呼び捨ててきた。俺も博美姉ぇと呼んでいる
こうして俺のForte-C初日が終わった。

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[ 2016/08/24 20:51 ] 続・淫乱旅行 | TB(-) | CM(0)

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