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トラック野郎⑦

 会社に戻り、報告書を書いている。パソコンのキーボードをカタカタと叩く。マウスをクリックした。
「大塚…ちょっと来いよ」
「ハイ」
「俺に言うことねぇのか」
「えっなんすか」
社長がニヤリと笑顔を俺に向けた。
「社長、俺とやりたいんすか」
「ば、バカヤロ…そんなんじゃねぇよ。結婚するんだろ」
「えっ…あっ…ハイ」
社内では俺の性向は知れ渡っている。だけど陽と所帯を持つことは言ってなかった。
「今度紹介しろよ」
「ハイ……」
ゲイである俺を寛容に受け入れてくれる会社。俺は本当にいい所で務めさせて貰っている。心底感謝した。1週間後の土曜日。時間は午後7時、俺達の結婚を祝う会が開かれた。場所は会社の近くの焼肉屋。陽は俺の隣にチョコンと座っている。緊張してるのか表情はチョッと硬い。
「みんなビール注げよ」社長が声を上げる。
「乾杯の音頭は柴田頼むな」
「ハイ」
グラスを片手にみんなが立ち上がった。
「源太、陽君結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
俺の隣で立っている陽は軽く頭を下げた。カチンカチンカチンと32個のグラスが触れ合う。
「おめでとう…」「頑張って…」「幸せになれよ」社員達の暖かい声に心が和んだ。
ジュージューと肉が焼ける。口に含むと濃厚な肉汁が溢れてきた。ほろ酔い気分のみんな。席が移動し始めた。陽が女子社員に囲まれている。
「ねぇ源さんのどこがいいの」古株の公美子が陽に声を掛けた。
「ぜ、全部っすよ。優しいし俺のことばかり考えてくれてる」
俺の周りには大工のタツ、内装職人のリョウ、設備屋のジュンが陣取っている。この3人実は俺が喰ったことがある奴らだ。
「やっぱり源さんが挿れるのかよ」タツが俺の耳元で囁いた。
「俺が挿れられることもあるぜ」ちっちゃい声で俺は応える。
「えっ…俺源さんに挿れたかったな」リョウが声にする。傍らにいるジュンが頷いていた。
「バカヤロ…声デケぇぞ」
クスクスと笑う声が響いた。
「私さ、ボーイズラブって全然嫌じゃないけど信じられないのよのね」突然公美子が変なことを言い出した。
「ボーイって陽君はそれでも良いけど源太はジジイだぜ。ボーイじゃねぇよ」
柴田がチャチャを入れる。笑いが起こった。
「みんな愛してるって証見たくない」公美子が言う。
「キスしろ」柴田が言った。
「キッス、キッス、キッス、キッス、キッス」キッスコールが湧き起る。
「判った。する……陽こっち来いよ」
俺の横に来た陽を抱き寄せる。
「愛してる……」
唇を優しく合わせた。
接吻 (1)
パチッパチッパチッと公美子が手を叩く。それに引き釣られるように拍手の渦が湧き起った。男同士の愛に偏見が微塵もない仲間達。こんな仲間と出会えて俺は嬉しく思えた。
「陽君は仕事どうするんだ」社長が陽に問うた。
「こっちの運送会社にでも入ろうかと思ってます」
「じゃぁうち来いよ。運転手探してた所だからな」
「えっ……」
陽が俺に目をくれる。俺はコクりと頷いた。
「陽君こっち来いよ」
社長と陽がヒソヒソ話している。
「じゃぁお願いするっす」
「みんな陽君が入社することになったぞ」
歓声が湧き起る。
「今度は入社祝いだ。ビール注げよ」
みんなが立ち上がった。
「じゃぁ私が……」
公美子が名乗り出る。
「皆さん、可愛い陽君が今度入社します。陽君の健闘を祈って乾杯」
グラスが触れ合う。暖かい目で陽を見ていた。凱雄建設。脛に傷を持つ者が多い会社だ。何度も男に捨てられた公美子、借金まみれだった柴田、俺もその1人だと思う。だからかも知れないけどみんな人に優しくできるのかもしれない。素敵な会社だ。
「よぉ~ぉ、パン」社長の一丁締め。俺達の結婚祝いと陽の入社祝いが終わった。
「陽、うちの会社でホントに良かったのか?給料安いだろ」
「うん、でも長距離乗ってると源太兄ちゃんとの時間作れないし……それに」
「それに…なんだ」
「社長が源太兄ちゃんの側に居たほうが浮気防げるだろってさ。あいつ何時職人に手出すか判らないからって言ってた」
「バカヤロする訳ねぇだろ。過去の話だ。お前と別れてた時だって誰ともしてねぇんだからな」
「判ってるよ。でも何時も一緒に居たかったからさ」
陽と視線が交差する。陽の瞳。キラキラ輝いていた。

GORILLA

GORILLA


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[ 2015/01/25 21:37 ] トラック野郎 | TB(-) | CM(0)

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