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体育会男子の叫び③

 そんな或る日。何時ものように仕事が終わり、スーパーに行った。長澤君がレジに立っている。客は中年の男女。ご夫婦に見えた。寄せてある折り紙と台所用洗剤目をやる。今度はお客様を見た。
「こちらご一緒で宜しいでしょうか」
女性の表情が一変する。長澤君を睨み付けた。2人の客が罵声を浴びせ始める。何処かで見かけた事がある2人だった。
「てめえ判ってるのか」
「全くなってないわ」
男性が喚く。連動するように女性客が声を轟かせた。
「あんたお客様の声見なかったの。この洗剤は蓋が開いたら洩れるし、折り紙はパリッとした状態で孫に渡したい。それを同じ袋に入れる。非常識極まりない」
女性客が言い切る。長澤君に視線を飛ばしていた。
「私は客に商品入れさせるように頼んだの。周知されなかったの」
女性客が喚き散らした。長澤君がブルブル震えている。店長が駆け寄ってきた。この店長何度か見かけたけど眼光が鋭い。年の頃30歳台後半。ガタイはでっぷりとしている。2週間位前に赴任してきた筈だ。
「済みません。お客様でしたか。あのお客様の声書かれたの……」
「えっ……」
店長の言葉に女性客が慌てふためいている。回りの客達が一斉に女性客に目を遣った。
「お客様にお伺いしてから、レジ袋に入れるように周知致しましたが何かご迷惑お掛けしたでしょうか。あの書き込みを見て、入れて貰えるのならその方が嬉しいとのご意見を多く頂いてましたので……」
俺は思い出した。あの2人は樋山夫妻。俺はレジに近寄った。
「樋山さん、お久しぶりです。今度は此処で暴れてましたか。所で今日は車ちゃんと停められましたか」
「停められたわよ。たくもうあのバイク腹立たしいわ」
樋山夫人が俺の声に応えた。またポカをする。表情が強張っていた。
「あの書き込みもあんただったんだな。あの時も停められたんだろ。駐車場こんなに広いもんな」
「それはそうだけど……マナーもなってないし、非常識でしょ」
樋山夫人に視線をぶつける。俺は呆れ顔を浮かべた。
「この事言ってやろうか。あんたの旦那の上司にな」
樋山さんの旦那がわなわなしている。顔付きが青ざめていた。
「常識、マナーって言うのは人其々違うんだぜ。音洩れに割り込み。脚を投げ出して電車に乗ってる奴も居る。スーパーで言えばカートをオモチャ代わりに遊ぶ子供。それを厳しく叱る親もいる。だが放置している親もいるだろ。みんな意識が違うんだ。常識が普通の人と違ってるのはあんたの方だろ。もし違ってないのなら上司に言われても問題ないもんな。違うか樋山さん」
「……」
俺の言葉を樋山夫妻は黙殺する。俺は2人に視線を飛ばした。
「ならばだ。俺の叔父が旦那さんの上司だと判った時なでアタフタしたんだ。非常識なことをしたと思ったんだろ」
「……」
尚も2人は俺の言葉を黙殺する。樋山婦人が俺を睨みつけてきた。
「私達の事をしゃべる。個人の機密情報でしょ」
「個人情報の露見じゃないぜ。善良な市民が営む店へ公人がモラルの無い行為をしたと言う苦情を上げるだけだ。それに個人情報露見させたのはあんたの方だからな。俺もっと上の方とも懇意にしてんだぜ」
樋山夫人の声に俺は言い放った。樋山夫人は不貞腐れている。買い物籠を取ると旦那と2人でレジ袋に商品を入れ始めた。
「この人に謝らねぇんだな。情けねぇ」
俺はぽつりと声にする。今度は店長に目を遣った。
「店長あんたかなり煩いみてぇだな。この前鮮魚売り場の担当者に売り場で、でっけぇ声上げてバイトを怒ってたもんな。もっとこっそりやれよ。感じわるいぜ。それに仕事も女も同じだって言ってたよ。女性は物じゃねぇ。取り様によっては女性軽視だからな」
店長は沈黙している。目が怒ってるのが判った。
「前の店長は良かったぜ。いつもニコニコしていて俺ごときに挨拶してくれたもんな。挨拶して欲しい訳ではねぇけどやっぱ気持ちいいよな」
「……」
店長は俺の言葉を黙殺する。俺は買い物を始めた。スーパーを出る。街燈が優しい光を放っていた。
夜 (10)
「あっお客様」
男の声に振り返る。長澤君だった。
「ありがとうございました。何かお礼したいんですけど……」
「構わねぇよ」
長澤君の声に俺は応えた。
「でも……」
俺の心の中の悪魔が囁き始めた。
「じゃぁやらせろ」
俺はそっと長澤君のケツを撫でる。微かに震えていた。
「冗談だぜ。何か困ったことあったら連絡してこいよ」
俺は名刺を手渡した。
「じゃぁな」
俺はマンションへと向った。それから8日間経過する。”倭家”に長澤君が訪れた。時刻は8時に迫っている。外は夕闇が夜の黒に包まれていた。
「おおどうした。何か悩みでもあるのか」
長澤君が頷く。表情が曇っていた。
「もうちょっとで終わるから其処の喫茶店で待っててくれよ」
「うん」
俺の声に長澤君が応える。店を出て行った。背中から哀愁が漂っている。何事が有ったのかと思った。時計が8時を報せる。シャッターを下ろし店を出た。喫茶店に入る。奥のテーブル席で長澤君がショボンとしていた。テーブルを挟み向かい合って座る。運ばれてきたアイス珈琲をストローで啜った。
「俺、あの日店長にこっ酷く怒られたんだ。その後店長のアパートに連れてかれて飯喰いながら酒飲んだんだよ」
長澤君が俺を真っ直ぐに見てきた。
「そんで俺酔っ払ってしまって、気付いたらガムテープで腕縛られてて、着ている物脱がされていた」
長澤君の目に涙が溜まっている。一滴頬を伝っていた。
「おっ俺店長に犯された」
店長は単身赴任と言う。女に手を出す訳にはいかないと聞いた。セクハラになるからだと言う。だがそれは男も同じ筈だ。
「本部に訴えようと思ったよ。でも出来なかった。俺が犯られたと知られたくなかったし写真も撮られてたから……」
「何で俺に言おうと思ったんだ」
「俺を誘ってきた時目がマジに見えた。もしかしてホントにゲイかなって……相談に乗ってくれるかも知れないって思ったんすよ。他に相談出来る人いないしね」
「ああ俺はゲイだぜ。判った。考えてみるな」
涙目が微かに明るくなっている。この8日間に5回犯られたと聞いた。長澤君はバイトをやめたと言う。辞めてもしつこく誘ってくると聞いた。今日も10時過ぎに店長のアパートに行くと言う。長澤君の目が翳っていた。
「店長ってどんなガタイしてんだ。デブに見えるけどな」
「デブって言うよりはプロレスラー体型っす。ちょびっと腹は出てるけどね」
俺の言葉に長澤君の応える。脳裡に邪な考えが浮かんだ。

猛牛

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涙の雫 (S)

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GORILLA

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[ 2016/10/01 11:13 ] 体育会男子の叫び | TB(-) | CM(0)

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