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親父の遺志⑩

 進化し続ける、オフィス漢。ただひとつ気掛りな事がある。それは親っさんの健康だ。もう親っさんも58歳。若くはない。この前の健康診断で血圧が高く、心臓に疾患が有る事が判った。仕事も普段の生活も出来るだけ負担が掛からないように心掛けている。そんな矢先事件が起きた。
「出掛けるぞ」
親っさんが俺達に声を掛ける。倭雄舎で新たに取引を開始するふたつの会社との打ち合わせに向った。メンバーは親っさん、俺、勇児、そして倭雄舎店長の宗嗣。新たな仕事に気持ちも高ぶった。時は夕刻。オフィス漢に向っている。最寄駅で降り、階段を降りようとした時だった。何か嫌な気を感じる。後から若い男女が俺達に回り込み男が親っさんに向かいデッカイ声で脅した。親っさんは一瞬止まり脅した若い男をじっと見ている。すぐさま胸を押さえこみ蹲った。カラダをガクガク震わせている。顔面が蒼白になっていた。
「親っさん……」
俺が声を上げた。
「親っさん、大丈夫すか」
勇児も声を掛けた。
「救急車だ。救急車呼べ」
俺の言葉に。宗嗣がスマホで119番する。人だかりができた。その騒ぎに脅したカップルが振り向く。狼狽しているのが判った。女が走る。男も逃げ出した。
「逃がすんじゃねぇ」
勇児が吼えた。
「や、止めろ」
親っさんが振り絞るように声にした。冬の夕闇が夜の黒に包まれる。
夜 (7)
街では冷風が牙をむいていた。救急車が到着し、親っさんは病院に運ばれる。直ぐ治療が始まった。
「心臓弱ってましたからね。驚かされて急激に負担が掛かったのだと思います。今夜が峠かと思われます」
先生の言葉がズシンと胸に響いた。よからぬ事が脳裏を過る。忠之と武蔵も病院駆けつけてきた。
「カツ兄ぃ親っさんは……」
忠之が哀感帯びた声を上げた。
「まだ意識が戻らねぇ」
ポツリと俺が言った。
病室で親っさんを見守る。重たい空気に支配された。親っさんの頬がヒクヒク動く。意識を取り戻した。
「おっ、親っさん……」
俺が静かに口声にした。勇児がナースコールしようとしている。親っさんがそれを制した。
「レコーダー、俺の鞄にあるから持って来てくれ」
「お、親っさん」
親っさんの言葉に悲痛な声で俺が返した。
「いいから早く持ってこい」
忠之がレコーダーを渡した。親っさんがレコーダーを受け取る。親っさんは蚊の鳴くような声で録音し始めた。
「勝政、勇児後の事は頼んだぞ。宗嗣、忠之、武蔵。勝政と勇児のこと助けてやってくれよ。それから…あいつ、お前らと同じ匂いするんだ。大目に見てやってくれよ」
親っさんが俺を見つめた。
「勝政愛してる。ずっとこの言葉を言いたかった。キスしてくれるか」
俺は軽く唇を触れさせる。静かに放した。手をギュッと握る。親っさんの顔付が穏やかになった。
「み、みんなありがとな。いい人生だったぜ」
頭がガクッと枕に埋もれた。医療機器がツーツーツーと無情の反応をする。親っさんの目尻から一滴の涙が頬を伝っていた。
「せっ、先生呼べ」
俺が叫んだ。勇児がナースコールをする。主治医と看護師が駆け付けてきた。主治医の先生が親っさんを診ている。首を横に振った。
「ご臨終です」
武蔵が親っさんに抱き付いた。
「お、親っさんなんでなんだよぉ」
「親っさん……」
みんながが涙をボロボロ流している。俺だけでも気丈にしなければと思い拳を握りしめ天を仰いだ。だが涙がとめどなく溢れてくる。カラダがガクガクと震えた。主治医から警察に通報される。俺達は事情聴取を受けた。

絶倫の鬼

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[ 2017/01/26 21:21 ] 親父の遺志 | TB(-) | CM(0)

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