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親父の遺志⑦

 季節は初夏を迎えた。水色の空からは柔和な光が射している。何時ものようにオフィス漢の時が刻まれ始めた。俺の中で親っさんの存在ドンドン大きくなっている。考えるだけで切なくなった。
「勝政、話がある」
「ハイ」
親っさんの声に俺は応えた。事務所で親っさんとミーティングテーブルを挟み向い合って座る。親っさんが真っ直ぐに見てきた。
「なあ俺の息子にならないか」
「えっ……」
突然の親っさんの言葉に俺は戸惑いの声を上げた。
「養子になれよ」
「えっ……」
「嫌か……」
「そんなことねぇっす」
突然の親っさんからの提案。息子に成れと言う。涙がボロボロ流れてくる。親っさんが俺の隣に座ると抱き寄せてくれた。
「おっ、俺…天蓋孤独だと思ってたのに、家族出来て、嬉しいっす」
親っさんの胸に顔を埋めギュッと抱き付いた。
「おっ、親っさん……」
「勝政……」
親っさんの家は4LDKの間取り。1階に20畳のリビングダイニングと8畳の和室、2階には10畳の主寝室と6畳の洋室が2つある。その1室を俺に与えてくれた。憧れの親っさんとひとつ屋根の下に棲んでいる。俺は芝崎勝政から岩倉勝政に変わった。仕事にプライベート、笑顔が絶えない毎日が続く。充実した毎日が繰り返された。
「親っさん…今月の売上です」
「おぉ頑張ったな」
「ありがとうございます」
親っさんの笑顔。俺にとって何物にも代えがたいものだ。
「親っさん、飯の用意できました」
「おお判った」
テーブルを挟み向かい合って座る。グラスにビールを注ぎ合った。
「お疲れ様」
親っさんの声にグラスがカチンと触れ合った。俺は親っさんが好き。それは社長とか父親としてではなく男としてだ。だけど親っさんはそんな気持ちは多分ない。愛してはくれる。ただそれは息子としてだと思う。親っさんはホストの技術研修をすることもある。それは他の男とやることを意味した。他にも男の影を感じることも有る。親っさんと同じ屋根の下で暮らし同じ空気を吸う。そしてたまにはHしてくれる。それだけで充分だ。他の奴と付き合いたいという気持ちにはならない。安堵と潤いを与えてくれたのだから……
 そんな俺ももう39歳。乱館、倭雄舎の店長を経て今オフィス漢の運営も担うようになった。もう1人一緒に行動してくれる奴がいる。それは俺の弟勇児。歳は37歳。勇児は俺と同じように施設の出身者。26歳の時癒し庵に入店し一昨年親っさんの養子になった。俺と同じように荒れた生活をしていた勇児。親っさんは救い上げ更生させた。今三つ巴となってオフィス漢を運営している。他にも信頼おける仲間が増えた。倭雄舎店長の宗嗣31歳、乱館店長の忠之30歳、癒し庵店長の武蔵29歳。宗嗣と武蔵は手の付けられないヤンキー、忠之は暴走族だった。最初来た時の険しい表情は消え穏やかな目の光を放っている。みんな親っさんの深い愛情で更正された。オフィス漢は5人の力強い絆で結ばれている。勇児には何時の頃からか俺を兄貴と呼んできた。他の奴等にはカツ兄ぃと呼ばれてる。先日決算が終わった。昨年対比132%。ご褒美にスタッフ、ホスト全員に特別ボーナスが支給された。 今日は慰労会。マイクロバスで山間の温泉に向っている。車窓に差し込む初秋の陽光。澄み切った青空が望めた。
春の空 (5)
穏やかに野郎共を照らしてきた。野太い声を上げはしゃぐ男達。笑顔が輝いていた。時刻は4時を回っている。俺達はホテルに着いた。総勢26名の男の軍団。全員短髪坊主のガッチリ体型、その上髭を生やしている。周りから見たらチョッと異様な雰囲気かも知れない。チェックインを済ませた。
「宴会は6時からだからな。遅れるなよ」
俺が吼える。部屋割りは俺と親っさん、勇児と宗嗣、忠之と武蔵が同室になった。部屋に入る。6畳の和室だった。窓からは渓谷が望める。水面に日の光が反射していた。
「親っさん、大浴場行きませんか」
「おお、そうだな」
俺の声に親っさんが応える。浴衣に着替え大浴場に向った。中に入ると勇児、宗嗣、忠之、武蔵が来ている。徐々に他のスタッフ、ホストも入ってきた。オフィス漢のスタッフ、ホスト達は脛に傷を負っている者が多い。そんな奴等でも頑張って生きている。売上が伸びずに悩んでいた奴も居た。お客様と些細なトラブルに巻き込まれた奴も居る。みんなそれに打ち勝ってきた。それは親っさんのお蔭だと思う。親っさんは愛情を持って人に接する。時には誉め時には叱咤激励した。そのすべてが愛情だと俺は思っている。目を瞑ると19歳の頃からの色んな事が頭の中を駆け巡った。
夜7時パーティールームにみんなが集まる。時間通り宴会が始まった。
「みんなビール注げよ」
勇児が声を張り上げる。全員のグラスにビールが注がれた。
「兄貴、お願いします」
勇児が俺に振ってきた。
「みんな、この1年間お疲れ様でした。今日は目一杯楽しんでくれ。乾杯」
俺が声を上げる。カチンカチンカチンとあちこちでグラスが触れ合っていた。
「乾杯……」
「オフィス漢最高……」
男達が吼える。料理を食い酒を酌み交わした。男達が席を移動し、色んな所で談笑している。勇児が突然立ち上がった。
「みんな聞いてくれ。この場を借りて報告したいことがある。忠之来いよ」
忠之が勇児の横に寄り添うように立っていた。
「実は俺こいつと付き合っている」
宴会場に響めきが起こる。拍手が鳴り響いた。
「おめでとう」
「おめでとう」
男達の掛け声が飛んだ。ヒューヒュー……ヒューヒュー囃し立てる。勇児と忠之が会釈した。
「親っさん、兄貴、そんな訳で今度、家、出させてください。こいつと一緒に住みます」
勇児の明るい声を上げた。
「親っさん、カツ兄ぃ、宜しくお願いします」
忠之が俺と親っさんに深々と頭を下げた。
「おめでとう。判ったぜ。その代りここでキスしろ」
親っさんの突然の提案に戸惑う、勇児と忠之。
”キッス””キッス””キッス””キッス”キッスコールが沸き起こった。
勇児が忠之を抱き寄せる。唇を寄せていく。軽くキスをする。また拍手が湧き起こった。親っさんに耳打ちされる。貸切風呂を予約しとと言う。俺はフロントに電話を入れる。予約内容を親っさんに伝えた。
「後で祝ってやるからな。みんな4階の貸切風呂に1時間後集合だ。それから宗嗣と忠之部屋交換してやれよ」
親っさんが声を上げる。親っさんの計らいで勇児と忠之を同室になった。親っさんと勇児そして忠之の視線が交差している。勇児と忠之が親っさんに向かって会釈した。2人の眼差しは幸せ色に輝いている。親っさんが俺に目を呉れた。
「勝政、締めてくれ」
親っさんが声を上げる。俺は起立した。
「じゃぁみんな立ち上がってくれ」
男達がきびきびと立ち上がった。
「よぉ~ぉ、パン」
宴会が終わった。其々が部屋に戻る。穏やかな時が流れた。

黒蟻王

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バリ受ケ肉食男優

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[ 2017/01/27 20:50 ] 親父の遺志 | TB(-) | CM(0)

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