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早春のバスツアー③

 俺達を乗せた車が動き始める。夏の夕刻の光が望めた。
「家まで送ってくぜ。それとも知られるの嫌か」
「そんなこと無いっすよ。悠杜町っす」
車が俺んちへ向った。
「其処の角曲がった所っすよ」
「判った」
俺の声に悦朗は応えた。車が静かに停まる。悦朗が何かを書いていた。
「これ俺のアドレスと電話番号だよ」
悦朗が声を上げた。俺はメモ書きを渡される。俺はスマホを取り出した。悦朗のアドレスにメールを送る。悦朗のスマホのバイブ音が鳴った。
「俺の電話番号とアドレスも送ったよ」
「ありがとな」
俺の声に悦朗が応える。俺は抱き寄せられた。唇が寄ってくる。軽く合わせた。唇が離れる。視線が交差した。
「寄ってく」
「明日、朝早いから今日は帰るな」
俺の声に悦朗は言葉を返してきた。
「じゃぁまた」
「うん、じゃぁね」
悦朗の言葉に俺は答える。俺はマンションのエントランスに入った。クラクションが鳴る。悦朗の車が小さくなっていく。もっと一緒に居たい。僅かな切なさを覚えた。俺達は付き合い始める。色々と判ってきた。悦朗の仕事は精密機械工場の技術者。両親と暮らしてると言う。俺の仕事の事も話した。週末は俺の会社の側まで悦朗は迎えに来る。夜は俺のアパートで激しい夜を過ごした。初めて連れてかれたハッテンビーチ。くっきりと六尺の焼け跡が付いている。
日焼けS
温泉、映画そしてショッピング。色んな所に出掛けた。俺の中で悦朗の存在が大きくなる。俺は恋に落ちていた。季節が巡る。晩秋を迎えた。悦朗と逢う回数が激減している。結局新年を一緒に迎えることは無かった。
「遊びたかったら勝手にどうぞ」
最後に悦朗から言われた言葉。俺の心は抉られた。夏に出会い4箇月余り。俺の恋が終わった。悦朗にとって俺はただのセクフレに違いない。一滴涙が頬を伝った。ハッテン場、六尺バー。俺は男を漁った。付き合った奴も居る。だが長続きはしなかった。その度毎に俺は思う。もう恋なんてしないと……俺を男同士の世界に戻してくれた結菜先輩とは連絡を取り合っている。俺が失恋する度に慰めてくれた。今俺は結菜姉ぇと呼んでいる。そんな結菜姉ぇも1年前に結婚した。
時が流れる。俺は31歳の早春を迎えた。それなりに男遊びはしてる。だが付き合っている奴は居ない。彼氏居ない暦は3年になった。俺は今六尺をほぼ常用している。スパ銭で見られるのも平気になった。もう直ぐ俺の誕生日を迎える。俺は自分にプレゼントすることにした。それは早春の旅。雪国に行くことにした。先日バスツアーの申し込みを済ませる。心が躍った。
 早春の青空が広がっている。眩い光が射してきた。お気に入りのPコートを羽織る。俺は待ち合わせ場所に向った。時刻は6時50分。今待ちあわせ場所に来ている。カップルに家族連れ。色んな人がたむろしている。その中に1人の男が目を引いた。ダウンジャケットにデニムパンツ。首にはチェックのマフラーを巻いている。年齢と背丈は同じ位の髭坊主だ。視線が交差する。俺は会釈した。
「みなさんバスに乗り込んでください」
ガイドが声を掛ける。俺達はバスに乗り込んだ。指定された席に着く。俺の隣はあの男だった。
「宜しくお願いします。朝鞍です」
男がやけに明るい声を上げた。
「滝嶋です。こちらこそ宜しくお願いします」
俺がぼそっと声にする。男に目を遣った。所詮はノンケ。だがこんなタイプの男と一緒に旅出来る。俺の心は弾んだ。男がマフラーを解く。ダウンジャケットを脱いだ。太い首をしている。着衣の上からでもガタイの良さが伺えた。バスが動き始める。雪国へと向って……
「良かったら食べませんか」
男が俺に声を掛けてきた。
「あっ済みません」
俺が声を上げる。差し出された握り飯を口に運んだ。
「凄ぇ美味いっす」
俺が言葉にする。男は微笑んでいた。
「塩も海苔も拘りが有って取り寄せてるんですよ。温かいお茶っす」
魔法瓶からお茶をカップに注ぐと渡してくれた。男が色々と語り始める。仕事は鉄筋工だと言う。高校時代に剣道に励んでたと聞いた。今はジムに通ってると言う。男が俺を見てきた。
「滝嶋さんって何歳なんすか。俺は31歳っすよ」
「えっ奇遇だな。俺とタメっすよ」
男の声に俺は言葉を返した。
「俺、明日32歳の誕生日なんです。このバスツアーは自分へのプレゼントなんだ」
「えぇ~俺も明日誕生日なんだ。でも俺は傷心旅行っすけどね。失恋しちゃったんだ」
俺の言葉に男は答える。傷心旅行だと言う。だが言葉の音色はやけに明るかった。朝鞍さんの住まいは隣町だと言う。住まいに誕生日そしてガテン系の仕事。俺達は共通点が多かった。時刻が12時に迫っている。バスがサービスエリアに入った。お食事処に入る。俺は和牛朴葉みそ焼き定食、朝鞍さんはすき焼き定食を頼んだ。肉を口にする。コクと旨みが口の中に広がった。バスが動き始める。車窓からは雪景色が望めた。何時の間にか俺は朝鞍さんを下の名前の海翔と呼んでいる。海翔も俺のことを颯太と呼び捨ててきた。ガラス工芸の美術館に入る。アール・ヌーボーのガラス達が迎えて呉れた。伝統的建造物が並ぶ街並みを堪能する。古き良き日本を感じた。陽が西の空に傾き始め、バスは合掌造り集落へと向っている。海翔が視線をぶつけてきた。
「颯太、お前柔道してたんだよな。良い脚してるよな」
海翔が声を上げる。その声が微かに震えて聞えた。俺の太ももに手を置いてくる。指が僅かに俺のちんぽに触れた。俺は驚愕する。同時に俺のカラダが震えた。こいつまさか……俺が大胆な行動を取っていた。
「お前も良い脚してるぜ」
俺がぽつりと声にする。海翔の太ももに手を置いた。微かに海翔のちんぽに指を触れさせる。視線がぶつかり合った。
「そ、颯太……」
海翔に軽く手を握られる。直ぐに離れた。鼓動が早鐘のように高鳴ってくる。俺は頷いていた。
「俺、傷心旅行って言ったろ。相手は男なんだ。ちょびっとお前に似てるんだよ」
俺の耳元で海翔が囁いた。
「最初お前を見た時胸が痛くなったんだ。バスに乗ると席隣だったしな。凄ぇ嬉しかったよ」
海翔が真っ直ぐに見てくる。瞳の奥から一途な光が見えた。
「俺じゃ駄目か」
俺は首を大きく振っていた。大胆な行動を取った海翔。俺もそれに応じた。今宵何かが起きる。きっと隠微な夜になると思った。バスが目的地に到着する。俺達はバスを降りた。幻想的な合掌造りの集落がライトアップされている。さり気無く手を繋ぐ俺と海翔。暫らく振りに感じる幸福を覚えた。時刻は7時に迫っている。バスがホテルに着いた。
「飯の前に風呂入ろうぜ」
「おお、そうだな」
海翔の声に俺は応えた。2人で俺の部屋に入る。2つのバッグがどさりと床に落ちた。海翔に抱き寄せられる。静かに唇を合わせた。舌を挿れる。俺達は舌を絡め合った。静かに唇が離れる。視線が交差した。俺達は着ているものをバサバサ脱ぐ。晒された俺の六尺一丁のガタイ。海翔が目を凝らしている。熱い視線を感じた。
なのか」
「まあな。お前は締めないのか」
海翔の声に俺は応える。海翔に目を遣った。
六尺バーで何度か締めたことあるよ」
「そうなのか。俺ので良ければ締めるか。何本か持って来てるからさ」
「うん締める」
俺達は浴衣を羽織る。1本のを海翔に渡した。今展望大浴場に向っている。蒼く冷えた夜の空気に包まれた。

猛牛

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涙の雫 (S)

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GORILLA

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[ 2017/02/26 17:37 ] 早春のバスツアー | TB(-) | CM(0)

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