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陽春の光⑧

 今俺達は家の内見に来ている。結局決めたのは高台にある家だった。ベランダからの眺望もいい。遠くに見える山々が穏やかな表情を見せていた。
不動産屋で手続きを済ませる。俺達を乗せた車が動き始めた。
「兄貴何処行くの」
「いいから着いてこいよ」
侑吾の言葉に俺は応えた。俺は車を走らせる。車をショッピングモールの駐車場に停めた。休日のショッピングモール。家族連れ、カップルで賑わっている。俺は時計店の前で脚を止めた。
「時計買おうぜ」
「えっ」
俺の声に侑吾が応える。表情が少し驚いて見えた。
「ペアウォッチだ」
あれこれ見せて貰った。選んだのはシンプルなシルバーの腕時計。そして刻印して貰った。
”Kosei&Yugo semper”康生と侑吾、永久に……
新居の鍵を付ける本革のキーホルダーも購入する。kosei&Yugo。名前だけを刻んだ。
「兄貴ぃありがとう。俺すんげぇ嬉しいっす」
「ああお前が喜ぶことは出来るだけしてやるからな」
侑吾の声に俺は応える。2人の視線がぶつかり合った。
「じゃぁさいっぱいHしたい」
「バカやろ。いっつもしてるだろ」
おれはコツンとおでこを小突いた。
「兄貴ぃ明日って予定有るのか」
「いや特にはねぇよ」
「チョッと遠出になるけど行きたいところあるんだ」
侑吾から何処かに行きたいとか、何かを欲しいとかを言ってくる事は今まで無かった。始めての侑吾からの願望。俺は思惟した。
「何処に行きたいんだ」
「父さんのお墓参りにいきたいんだ」
俺の声に侑吾が応える。俺は侑吾を真っ直ぐに見た。
「ああ判った。俺もお前の父さんに会って挨拶しないとな」
 翌日俺達を乗せた車が動き始める。空はうっすらと霞雲が掛かっていた。
霞雲1
片道2時間余りの道のりのドライブデート。何気に侑吾は楽しげだった。信号待ちの時俺の頬っぺたにチュッとキスしてくる。お菓子を口に運んでくれた。顔が緩んでくる。侑吾に目を遣った。表情が輝いている。幸せだなって俺はこの時思った。時刻は12時を回っている。俺達は侑吾のご両親が眠る墓地へと着いた。お墓を綺麗に掃除する。お父さんが好きだったという酒と煙草をお供えして花を飾った。御線香を焚く。俺達は合掌した。”初めまして侑吾の会社の上司であり恋人です。お父さんの無念さは痛いように判ります。これからは俺が侑吾を守っていきますのでゆっくりとお休みください”俺達は墓地を後にした。
墓地の傍にある蕎麦屋に入る。窓際のテーブル席に向かい合って座った。俺は大ざる、侑吾は山菜そばを注文する。程よくこしがある麺が絶妙なそばつゆと絡み合い、喉を通り過ぎていった。
「兄貴、父さんに何て言ったの」
「お前の事俺が守ってくから安心してくださいってさ」
「えっマジっすか」
侑吾の満面の笑顔を浮かべている。可愛くて仕方なかった。
「侑吾、でもな仕事の時は上司なんだからな。けじめは付けろよ」
「ハイ、ボス」
侑吾がチョッとおどけて声にする。俺はおでこをコツンと小突いた。蕎麦屋を後にする。俺達を乗せた車は一路俺んちへと向った。途中家具や家電を見る。食器屋にも立ち寄った。
「兄貴、キッチンはカウンタータイプがいいな」
「うん、そうか。俺も料理手伝ってやるからな」
侑吾の声に俺は応える。侑吾が柔和な笑顔を浮かべていた。もう直ぐ侑吾との暮らしが始まる。考えてるだけで心が弾んだ。
 忙しい日々が始まる。仕事の合間を見て知哉さんとの打ち合わせが行なわれた。季節が巡り春を迎える。公園の桜の木が綻び始めていた。俺達の新居が完成する。1階のリビング。20畳ほどの広さに囲炉裏が設置されている。その傍らにはもうひとつの囲炉裏が床下に収納されていた。天井から吊るされた組子の照明。灯りを燈すと優しい光が射してきた。リビングから望める坪庭。傍らにメインツリーが植えられている。真ん中には煉瓦調の花台が設置されていた。その回りには春の花達が可憐な姿で植えられている。花台に桜の盆栽が置かれた。傍らに置かれた石製の手水。竹筒から水が流れ落ちていた。
「ありがとうございます」
「とんでもないです。康生さんと侑吾君の新居建築に携われて光栄です」
俺の声に建築士の知哉さんが応える。俺に2つの家の鍵を渡された。翌週の土曜日早朝から引っ越しが始まる。青空からは優しい光が射してきた。新たな家具、家電が運ばれてくる。2階の主寝室には大きめのベッドが設置された。1階の和室に置かれた小さな仏壇。其処には侑吾の両親が祭られている。時刻は10時に迫っていた。
「ボス、手伝いに来ました」
泰平が声を上げる。スタッフ達が手伝いに来てくれた。
「おお済まんな」
俺が声を上げる。傍らに居る侑吾が会釈した。時が微かに経過する。2台のトラックが停まった。ダンボール箱が次々に下ろされる。其々の荷物が収納された。2階の6畳の洋室には俺達のデスクと侑吾のミシンも置かれる。カーテンが取り付けられた。
「粗方終わったな。引っ越し祝いを兼ねた花見やるからな。交代でシャワー浴びろよ。大分汗掻いたからな」
俺が声を張り上げる。俺達は交代でシャワーを浴びた。時刻は4時を回っている。侑吾と陽菜そして蘭。真新しいキッチンに立った。3人が料理を始める。トントントンまな板を叩く包丁の音が響いてきた。その時インターホンが鳴る。俺は受話器を取った。
「ハイ、今行きます」
俺が声を上げる。俺は玄関に向った。ドアを開ける。荷物を受け取った。
「俺が侑吾を孕ませて生まれたうちの長男だぜ。福って言うんだ」
福は生後4箇月のポメラニアンとチワワのミックス犬。俺に抱かれてクーンクーンクーンと甘えてくる。時折頬を舐めてきた。リビングの傍らにハウスとベッドを置く。主寝室にもベッドは設置した。真田 康生、高岸 侑吾そして福。玄関に表札を掛ける。俺達の引っ越しは終わった。リビングに放すと走り回っている。キュンキュンキュンと可愛い鳴き声を上げながらスタッフ達と遊んでいた。
「兄貴料理出来たよ」
「へー兄貴って呼ぶんだ」
侑吾の声に陽菜が応える。脇に居た蘭がにんまりと笑っていた。
「判った。準備する」
俺が声を上げる。とあるスイッチを入れた。もうひとつの囲炉裏が浮き上がってくる。スタッフ達が驚きの声を上げた。時刻は6時に迫っている。天井から吊るされた組子の照明に灯りを燈した。柔和な光が部屋を照らしている。リビングの傍らにはみんなから頂いた4色の薔薇が生けられた。花言葉は赤は熱烈な恋、黒赤色は永遠の愛、ピンクは暖かい心、オレンジは絆と言う。囲炉裏で魚が炙られている。料理も並べられた。窓を開け、坪庭をライトアップさせる。花台に置かれた桜の盆栽。満開になり、柔和な表情を浮かべている。俺達は囲炉裏を囲んだ。傍らでは福がご飯を食べている。あどけない表情を浮かべていた。
「ビール注ぎ合えよ」
俺の声にみんながビールを注ぎあった。
「今日は手伝ってくれてありがとう。これからも宜しくな」
俺の声にカチンカチンとグラスが触れ合った。
「侑吾って料理旨かったのね。手さばき見てびっくりしちゃった。あっ美味しいこの角煮」
蘭が声を上げた。
「凄ぇ美味ぇ。どれも絶品だぜ」
正博が声を上げる。表情が緩んでいた。坪庭の花達に癒される。和やかな中宴が終わった。窓からは心地好い春の香りを乗せた風が入ってくる。スタッフ達が帰路に就いた。

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[ 2017/04/09 13:00 ] 陽春の光 | TB(-) | CM(0)

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