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陽春の光⑦

 ある日出勤するとかなりざわついている。みんなが1台のパソコンを囲んでいた。
「ボス稲川さん逮捕されたみたいですよ」
正博が声を上げる。インターネットニュースをみんなで見ていた。
”ビル管理会社の清掃スタッフ、稲川 冬実傷害容疑で逮捕”
女性スタッフと稲川が何かで揉めたと言う。その仲裁に入った男性に清掃用具で殴ったらしい。エキサイトした稲川がその男性に殴る蹴るの暴行を加えたと言う。その男性は重体だと書いて有った。
「やっぱりなぁ。あいつならやりかねないよな」
「そうっすね。どぎつい奴だったからな」
泰平の声に正博が応える。その話題を口にするのも悍ましいかったのか沈黙していた。
「すぐキレるんだよな」
「怖かったわ」
「そして私は悪くないですもんね」
それが今日堰を切ったかのようにスタッフ達が声を上げる。ざわつきが治まらなかった。
「さあ朝礼始めるぞ」
俺は声を張り上げた。
「まず先月の売り上げですが、昨年対比135%です」
俺が声を上げる。スタッフ達の表情が明るくなった。
「お陰様で3箇月連続で売り上げは大幅に伸びました。そして今回僅かですが臨時ボーナスを出しま~す。それに今週末食事会を会社持ちで行います。フレンチのコースです。ドレスコード設定されているので身なりはきちんとして来てください」
俺が声を上げる。スタッフ達の歓声が上がった。
「それから残念ながら以前勤めていた稲川さんが傷害罪で逮捕されたようです。ここにいる高岸は一時、稲川さんと親子関係になってたけどこいつもあの人の家庭内セクハラの被害者です」
「えっセクハラ、俺もちんぽ触られたぜ」
正博が声にした。
「あっ俺もっす」
同調するように正博が言葉にする。オフィス内はまたざわつき始めた。
「いいかみんなこの事を理由に高岸を苛めるんじゃねえぞ」
俺が言い切った。
「判ってますよ。侑吾は稲川さんとは全然違って仕事も出来るし性格もいいし俺達の大切な仲間って言うか、弟みたいなもんだからな。苛めたりなんかしませんよ。なぁみんな」
正博の声にスタッフ達は頷いていた。
「それに侑吾が来てから売上伸び出したんですものね」
蘭が言い切った。
「そうだよな。稲川さんが辞めて侑吾が入ってきて雰囲気も良くなったから売り上げも伸びたんだぜ」
泰平が元気良く声にする。侑吾が嬉しそうに微笑んでいた。
「仕事始めるぞ」
俺が声を張り上げる。陽菜がカタカタパソコンのキーボードを叩き始めた。活気ある職場隠れ家が動き始める。俺達は仕事を熟なした。金曜日を迎える。スタッフ達は正装して出勤してきた。西の空に陽が傾き始める。
西日
茜色の空が星空に変わった。
「そろそろ出掛けるぞ」
俺が声を張り上げた。スタッフ達の目が輝いている。俺達はレストランへと向った。秋の夜風が気持ち良く肌を撫でてくる。煌々とした光を放つレストランが俺達を迎えてくれた。
「予約していた真田ですが……」
「お待ちいたしておりました。ご案内いたします」
俺の声にギャルソンが応える。俺達はテーブル個室へと案内された。俺達はテーブル席に着く。前菜とワイングラスが運ばれてくる。ギャルソンがグラスにワインを注いでくれた。グラスを胸の高さまで上げる。隣に座る侑吾が緊張してるのが判った。
「この3箇月良く頑張ってくれた。これからも宜しくな。乾杯」
ワインをひと口飲んだ。力強く豊穣な味がする。舌の上にどっしりと立ち上がる味の姿が見事だった。料理が次々に運ばれてくる。俺達はフレンチを堪能しながら色んな事を語り合った。
「侑吾良くあんなアイディア出たよね」
「男をそそるランジェリーシリーズと女の子セットだろ」
蘭の言葉に泰平が応える。侑吾のアイディアで新たに展開された商品群。そのお陰で女性客が増えた。
「だって女の子だってH好きな子いるだろうなって思ってさ……」
侑吾がボソッと声にした。デザートのムースが運ばれてくる。仄かな甘味が口の中に広がった。食後の珈琲がテーブルに置かれる。ほろ苦い香りが漂ってきた。正博、蘭そして泰平。3人が目配せしている。他のスタッフ達も頷いた。みんなの視線が俺と侑吾に集中してくる。ジリジリ熱く視線が突き刺さってきた。
「ボスうちの会社のモットーってアットホームっすよね」
「ああ小さい会社だからな。嬉しい事はみんなで祝いたいし辛い事が有っても話せば癒されることもあるからな。それこそ家族同様に付き合えればと思ってるぜ」
正博の声に俺は言葉を返した。
「ボス、最近好い事有ったっすよね」
「えっ……」
正博の言葉に俺は驚きの声を上げた。
「見ちゃったんすよ。なっ」
正博が蘭と泰平に向かって声にする。2人はにっこりと微笑んだ。
「えっ……」
俺が声を上げる。心が揺らいできた。
「チョッと前っすけど駅近くの公園で侑吾とキスしてるの俺達見ちゃった」
泰平が明るい声で言った。
「えっ……」
俺が声にする。手の平の汗まで判るような焦りを覚えた。
「もしかしてボスってゲイかなって思ってたんすけどね。ゲイDVDのデモ見てる時とか入荷した時とか嬉しそうっすもんね」
泰平が声にする。そうかも知れない。顔の表情に出やすいと言われた事もあった。俺って判りやすい人間なんだろうなってこの時思った。
「それに俺達ゲイに対して偏見これっぽっちも持ってないっすからね」
正博が言った。
「そうですよ。私達、縁有って人間の欲望のひとつを満足させるお手伝いさせて貰ってるんですからね。最初戸惑った事も有ったけど今誇りをもってやってます。もし偏見あるならいい仕事出来ないですからね」
蘭が言い切った。
「そうっすよ。じゃないとお客様の立場になって物事考えられないっすからね」
泰平が言った。
「人が人を好きになる。それが男で有ろうと女で有ろうと素敵な事っすよ」
正博が声にする。俺は返す言葉が無かった。
「ボス、侑吾おめでとう」
泰平が言葉にする。拍手が湧き起こった。
「ありがとな。俺と侑吾は付き合っている。そして今度同棲する積りだ」
俺が声を上げる。侑吾が頷いていた。
「それから、侑吾は俺の恋人だ。だけど俺に遠慮しないでこれからもビシビシ鍛えてやってくれ。いいな」
俺が言い放った。
「ハイ」
スタッフ達の元気な声が重なった。
「侑吾もいいな」
「ハイッ」
俺の声に侑吾が元気に応えた。
「これで俺も堂々と会社の買えるぜ」
俺が声にする。みんなのの笑いが沸き起こった。
「侑吾、ボスの何処がいいんだ」
正博が声にする。侑吾がキョトンとしていた。
「言え、侑吾」
「ぜ、全部っす。んで…んで俺の事ばっか考えてくれる所っすよ」
正博の声に侑吾が言葉を返した。
「ホントは私、ちょびっとボスの事いいなと思ってたんだ。ちょっと妬けるけど侑吾なら良いわ。この子ホントに優しいし、気配りしてくれる。月末で経理が忙しい時手伝ってくれるしね。侑吾絶対に幸せになるのよ」
「うん、陽菜姉ぇ。ありがと」
陽菜の言葉に侑吾が応えた。侑吾とスタッフ達。俺を慕ってくれてる。この家族達を俺は守っていく。深く心に思った。

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[ 2017/04/09 13:07 ] 陽春の光 | TB(-) | CM(0)

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