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復活①

 俺は篠原 賢一 32歳の背丈172㌢の髭坊主。あまり知られてない、ご当地グルメをSNSで紹介している。2度、本を出したが反応は今ひとつだった。こんな俺でも数箇所の市町村から観光大使を任命されている。広告収入、印税たまにある講演会。だがそれだけで食える訳ではない。その為4年前からコンビニを営み始めた。そんなある晩時刻は深夜12時に迫っている。1組の親子が訪れた。常連さんで、時々弁当とか飲み物を買いに来ている。見ているのはミニ丼。財布を覗きながら、父親は顔をしかめた。俺が最後に見掛けたのは2箇月位前だと思う。雰囲気が何時もと違った。ヨレヨレのシャツに薄汚れたスラックスを履いている。頬はこけ、やつれていた。5歳位の息子さんと手を繋いでいる。息子さんの着ているものは少しキツそうに見えた。もしかして貧窮してるのか……俺は商品棚を覗き込んだ。ひとつのミニカツ丼の賞味期限がもう直ぐ切れる。俺はミニカツ丼を手に取った。
「あっお客様……失礼だったら済みません。これもう直ぐ、賞味期限が切れるんで処分します。良かったら食べて貰えませんか」
俺が声を上げる。父親は明らかに戸惑っていた。
「済みません。ありがとうございます。ご厚情に甘えさせてくたさい」
「イートインコーナーでお待ちください。温めてきますから」
父親の声に俺は応える。丼を温めると持って行った。
「どうぞ」
「あっ済みません」
俺の声に父親が応える。息子さんが丼を食べ始めた。
「佑斗、美味しいか」
「うん、美味しい」
父親の声に佑斗君が応える。息子さんの名前が佑斗君だと言う事がこの時分かった。
「父さんは良いの」
「ああ、お腹一杯だからな」
佑斗君の声に父親が応える。満腹……そんなはずはないと俺は思った。弁当、サンドイッチ、おにぎり。探してみたが、賞味期限間近の品物は無かった。オーナーの俺。サービスですと何かをプレゼントしても良かったのだけれど……時が経過する。父親は俺に会釈すると店を出ていった。時刻は6時を回っている。朝番のバイトと交替すると俺は店を後にした。季節は盛夏。眩い夏の光が差してきた。酷暑と言われてる今年の夏。早朝だが結構暑い。何時ものように大きな公園を通り掛かった。目に留まったのはさっきの親子。ベンチで父親の膝枕で佑斗君が眠っている。俺は歩み寄った。
「おはようございます」
「あっおはようございます。さっきはありがとうございました」
俺の声に父親が応える。済まなそうな表情を浮かべていた。
「家に帰らなかったんですか」
「あっ……夕べは帰らなかったです」
俺の問いに父親が応える。その音色は歯切れが悪かった。もし俺がノンケで結婚していたら……佑斗君位の子供がいたかも知れない。この父親32歳で名前は板野 慎之介。俺は篠原 賢一と名乗った。
「同い年みたいっすね」
「そうですね」
俺の声に板野さんが応える。その時だった。
「う~ん」
佑斗君が声にする。佑斗君が眠たそうな声を上げながら、目覚めた。人は其々事情がある。この親子も何かドラマが有るに違いない。それは知らなくても良かった。俺は思惟する。ある決断をした。俺んちへ連れて行こうと……この親子が不憫でならなかった。
「俺んち直ぐそこなんで朝飯一緒に食って貰えませんか」
「とんでもないです。見ず知らずの人のご厚情にこれ以上お世話になるなんて出来ません」
俺の言葉に板野さんが応える。俺は板野さんに目を遣った。
「話したことは初めてだけど内の常連さんでしょ」
「それはそうだけど……」
俺の声に板野さんが応える。板野さんの目。翳りの中から微かな輝きが見えた。
「佑斗君にもご飯食べさせて上げないとね」
「分かりました。恩に着ます」
俺の言葉に板野さんが応える。俺達は歩み始めた。
「ちょっと待っててくださいね」
「ハイ」
俺の声に板野さんが応える。俺は直ぐ側にあるコンビニへ入った。
「お待たせしました」
「ハイ」
俺の言葉に板野さんが応える。俺達は家路に就いた。俺と板野さんの間で手を繋いでいる佑斗君。俺はホッコリとしたものを感じていた。
「着いたよ」
「凄いですね。同い年なのに持家ですか」
俺の言葉に板野さんが応える。俺は首を左右に振った。
「親が残してくれた家をちょっとリフォームしただけですよ。さあ上がってください」
俺が声にする。俺達は中へと入った。俺んちは4LDKで1階にはリビングダイニングが有る。隣接してるオープン型のキッチン。傍らにある仏間に入った。
「俺の両親っす」
「ご挨拶させて貰いますね」
俺の声に板野さんが応える。花を取り替え、線香を炊く。俺達は仏壇の前に、正座すると合掌した。何も分からない佑斗君。俺達を真似るように手を合わせていた。2階に有る10畳の主寝室、客間そして愛犬ルークの部屋。愛犬ルーク、ポメラニアンの牡でちょっとやんちゃだ。ベランダからの眺望も良い。キュンキュンキュン、ルークの声がする。2階から降りて来たみたいだ。
「佑斗君はワンコ好きか」
「うん、可愛い」
俺の問いに佑斗君が応える。健気な表情を浮かべていた。
「後で遊んでやってくれな」
俺の声に佑斗君が応える。俺は板野さんに目を遣った。
「朝飯の準備するから2人て風呂入ってきてくださいよ」
「えっ……」
俺の声に板野さんが応える。俺はさっき買ったコンビニの袋を渡した。
「ほら、早く」
俺のが声を上げる。同時に板野さんの背中を押した。浴室からキャッキャと佑斗君の声がする。俺は2階に上がり客間に布団を敷いた。今キッチンに立っている。程なくして料理が出来上がった。ルークにもご飯を与える。程なくして板野親子が風呂から上がってきた。
「ありがとうございました。重ね重ねご親切にして頂いた上に下着までご用意して貰ってご恩は決して忘れません」
「そんな、恩だなんて俺が好きでやってることですから、さあご飯にしましょう」
板野さんの言葉に俺は応える。俺達はテーブルを囲んだ。
「少し飲みましょう」
「えっハイ」
俺の声に板野さんが応える。俺達はグラスにビールを注ぎ合い、佑斗君にはジュースを与えた。冷たいビールが喉を通り、喉がゴクンと鳴る。板野さんが白飯を食べながら嗚咽していた。
「こんな温かい朝飯初めてっす」
板野さんが声にする。目が少し潤んでいた。佑斗君がご飯を済ませる。ルークと遊び始めた。酒が焼酎に替わる。酔いの為か心を許し始めたのか分からない。だが板野さんは饒舌になった。奥さんの玲奈さんとは出来婚。玲奈さんは寿退社したと言う。キツくなったつわり。板野さんは家事全体を熟すようになったと言う。そした出産。佑斗君が生まれた。だが何時迄経っても家事をする事は無かったと言う。佑斗君4歳、1年前の事だ。板野さんが帰宅すると佑斗君が怯えてたと言う。板野さんは玲奈さんを問い詰めた。
「どう言う事なんだ」
「知らねぇよ。それより早く飯作れよ」
板野さんの言葉に玲奈さんが応える。元々玲奈さんは家事は殆どしていない。そして育児放棄。板野夫妻に会話は無くなったと言う。更に板野さんに悲劇が起こった。不景気の為のリストラ。応ずるしか無かったと言う。板野さんの就活が始まった。退職して2週間余り。板野さんが帰宅した。
「気晴らしに佑斗連れて旅行にでも行ってくれば……」
「お前は行かないのか」
玲奈さんが声に板野が応える。何時になく玲奈さんは穏やかな表情を浮かべてたと聞いた。
「私、その日同窓会があるのよ」
「そうか」
玲奈さんの声に板野さんが応える。チケットと小遣い数万円を渡されたと言う。8日後の土曜日。板野さんと佑斗君は旅行に出掛けた。メールに電話。途中、何度か連絡したと言う。だがそれは全てスルーされた。今迄も有ったことだから何とも思わなかったらしい。翌日板野さんと佑斗君が帰宅した。家財道具が全て無くなっていたと言う。板野家の財布は玲奈さんが握っていた。その玲奈さんが蒸発。板野家の全ての財産を持ち出した。大急ぎで取ったハローワークの失業給付の口座変更。次からは失業給付を別口座に降込められると言う。それから数日が経過する。保険等の解約通知が届いたと言う。更に分かった事実。アパートの契約も既に解約されてたと言う。不憫で仕方無かった。
「くだらん事聞かせて申し訳無かった」
「そんな事無いっすよ。これからっすよ。頑張ってくださいね」
板野さんの言葉に俺は応える。板野さんの表情が眠たそうに見えた。
「少し寝た方がいいっすね。2階に布団敷いてありますから……」
俺が声にする。ルークと遊んでいた佑斗君。疲れたのかルークと並んで眠っている。起こさないように、静かに抱っこした。客間の扉を開ける。板野さんが布団に潜った。隣に佑斗を寝かせる。俺も寝室のベッドに滑り込んだ。どの位眠っていただろう。西の空に陽が傾き始めている。
西日
オレンジ色の陽が向かいの家の白壁に反射していた。夕飯の支度を済ませる。程なくして板野さんと佑斗君が起きてきた。
「良く眠れましたか」
「お蔭様で、こんなにぐっすり眠ったの久しぶりです」
俺の問いに板野さんが応える。表情が明るくなっていた。テーブルに料理を並べる。椅子に掛けた。グラスにビールを注ぎ合う。ジュースを注いだグラスを佑斗君の前に置いた。
「板野親子のこれからに乾杯」
俺が声を上げる。グラスがカチンカチンと触れ合った。板野さんがカジキのチーズ焼きを頬張る。目が細くなっていた。
「美味いっす」
板野さんが声にする。俺に目をくれた。
「俺、ご当地グルメの紹介とかしてるんで、そこで色々教わるんですよ」
「あっそうなんだ」
俺の言葉に板野さんが応える。俺達は色んな事を語り合った。
「板野さん、もう直ぐ部屋開けないと駄目でしょ。此処に住んで下さい。ルークも佑斗を気に入ってるみたいだしね」
「良いんですか」
俺は頷く。表情が緩んでるのが自分でも判った。
「世話になりっぱなしだな」
板野さんがぽつりと声にする。板野さんの目が綻んでいた。

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[ 2018/08/17 19:50 ] 復活 | TB(-) | CM(0)

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