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筋肉狂詩曲③

 季節が巡る。28歳の陽春を迎えた。春の芽生えをアチコチで感じる。
春の芽吹き (38)
会社へのアクセスもいい郊外の街へと俺は越してきた。新しい部屋は日当りの良い1LDKのマンション。引っ越し作業が終る。街へと繰り出した。街の規模はデカい。ショッピングモールや商店街も充実している。中々お洒落な街だ。ジムの入会手続きを済ませる。カフェに入ろうとした時だった。
「一騎でしょ。私よ」
後ろから声を掛けられる。元姉の澪さんだった。
「何か用ですか」
「そんなつれない事、言わないで入りましょう」
俺の言葉に澪さんが応える。澪さんは一方的話し始めた。俺も多少は知っている。澪さんは成績が悪すぎてエレベーター式なのに大学進めなかった。そして3年浪人、進学したのはFラン大学。家庭教師が付いてたはずたが何かあったのかなと……2年前に羽柴さんと言う人と結婚した。こんな女と結婚するのはどんな男だろう。其処だけ興味が持てた。
「結婚したんだよね。どんな人?画像とかあるの」
「うん」
俺の声に澪さんが応える。スマホの画像を見せてくれた。髭坊主32歳でちょっと強面。股間が濡れてきた。俺の仕事の事を聞いてくる。適当にかわした。
「ほぼ毎日残業だし、出張も多いから大変だよ」
俺が言う。この言葉が間違いだった。
「今度、何時行くの」
澪さんが声にする。俺は口を滑らしてしまった。
「ハイ私の連絡先。一騎のは……」
澪さんが声にする。仕方なく電話番号とアドレスだけ教えた。
「じゃぁ私用が行くね。ご馳走さま」
澪さんが言う。逃げるようにカフェを後にした。”また集りかよ。
相変わらず変らねぇな”俺の心の声。苦笑いした。淡く陽春の夕闇が漂っている。仕事が珍しく定時に終わり、ジムへと向かう。格闘技系エアロ、筋トレを熟した。ガタイの良い男がいる。俺は驚愕した。あの人は……俺は男の隣に掛けた。
「間違ってたらご免なさい。羽柴さんですよね」
「そうだけど君は……」
俺の声に羽柴さんが応える。イメージ通りの人だった。
「俺は東郷 一騎。澪さんの元弟です」
「ああ、君が一騎君かざっくりだけど話は聞いてるよ」
羽柴さんが言う。穏やかな表情を浮かべてた。
「良かったらお茶しないか」
「そうっすね」
羽柴さんの声に俺が応える。着替えるとジムを出た。今、近くの喫茶店でテーブルを挟み向かい合って座っている。遣っているトレーニングは、ほぼ一緒だった。連絡先を交換する。俺達は喫茶店を後にした。物言いたげな羽柴さんの目。何故か気になった。そんな或る日リビングで寛いでいる。澪さんからメールが着信した。
”明日出張行くんだよね。お土産のリストよ。宜しくね”6つの土産品が書いてある。えっ何この量。俺は返信した。メールも電話も着拒されている。あいつの性悪さに驚愕した。明日から3日間の出張。俺は新幹線で向かった。仕事が終わり土産店に向かう。澪さんからの依頼の物を購入する。量が多いので配送にした。
”澪さんから頼まれた土産品送ったよ”羽柴さんにメールした。時が流れる。羽柴さんから返信された。
”あいつ強請ったみてぇだな。済まねぇ金払うよ”
俺は必要ないと返した。穏やかな空気に包まれている。出張が終わり駅へと向かう。ふと駅前の酒屋に寄った。色んな地酒が並んでるいる。店員さんに相談して1本の地酒を買った。
”地酒買ったから都合良ければ羽柴さんちで飲まないっすか”
俺はメールした。時が微かに動く。羽柴さんから返信された。
”用事ないから6時には帰ってると思うよ”結局俺は8時位に行く事にした。一旦自宅に帰る。シャワー浴びた。身支度する。羽柴さんのマンションに着いた。時刻は8時に迫ってる。インターホンを鳴らした。
「ハイ」
澪さんの声。やけに明るかった。
「東郷です」
「今開けるね」
俺の声に澪さんが応える。ドアが開く。俺はリビングに通された。
「お土産済まんかったね」
「どんでもないです」
羽柴さんの声に俺が応える。澪さんは無視していた。今、俺達はテーブルを囲んでいる。チラシを渡された。
「宅配頼むんだけど奢らせて上げるね。どれにする」
澪さんが言う。俺は唖然とした。
「おい、いい加減にしろよ。お土産いっぱい貰って酒まで持ってきてくれてるんだぞ。俺が払う」
羽柴さんの声にする。その音色には怒気が含まれていた。
「何よ。もういい」
澪さんが怒鳴る。マンションを出て行った。羽柴さんが大きな溜息をつく。表情が強張っていた。
「済まねぇ」
「気にしないでください」
羽柴さんの声に俺が応える。程なくして惣菜が届く。テーブルに並べられた。今、テーブルを挟み向かい合って座っている。ぐい呑に地酒を注ぎ合う。カチンとぐい呑が触れ合った。飲みながら色んな事を語り合う。俺が養子に入った経緯を説明する。羽柴さんが複雑な表情を浮かべた。羽柴さんのスマホが鳴っている。羽柴さんが起動した。
「あいつ友達の家にに泊まってくるってさ」
羽柴さんが言う。羽柴さんが目をくれた。
「明日休みだろ。泊まっていけば……」
「ご迷惑でなければお願いします」
羽柴さんの声に俺が応える。羽柴さんが立ち上がった。
「布団敷いてきたからいつでも休んでくれよ。玄関の脇の部屋だからな」
「ありがとうございます」
羽柴さんの言葉に俺が応える。俺は床に就いた。一連の流れをを父さん達にメールする。静かに瞼を閉じた。ウトウトし始める。トイレに行きたくなり、目覚めた。リビングで羽柴さんがAVを見ながら、センズリ扱ごいてる。架橋に入ったようだ。
「あぁぁあっ射く。んぉぉあぁ射ぐ。んぉぉあぅ射くっ」
羽柴さんが声を上げる。ドビュッドビュッドビュッ…ビュビュッビュビュッビュビュッ…ビュッビュッビュッ羽柴さんが白濁汁を吹き上げた。そっとその場を離れる。トイレを済ませた。布団に潜る。何時しか微睡の中にいた。羽柴さんとジムで良く遭遇する。その後良くお茶をした。今、本音で話してると思う。色んな事が分かってきた。澪さんは専業主婦。数ヶ月前から家事を一切しなくなった。3食外食になった羽柴さん。掃除洗濯は帰宅後羽柴さんが遣ってる。心配していた元親からの突撃今の所無い。そんな或る日。トレーニングが終わった。
「ちょっと飲みに行こうぜ」
「いっすよ」
羽柴さんの声に俺が応える。俺達は居酒屋に行った。テーブルを挟み向かい合って座る。中ジョッキが運ばれてきた。
「お疲れ……」
羽柴さんが声を上げる。ジョッキがガチンと触れ合った。ビールを飲みながら料理を食う。同時に俺達は語り合った。
「この前見ちゃったんだ。センズリ扱いてるの、もしかしてセックレスっすか?」
「うん1年以上拒否られてる」
俺の問いに羽柴さんが答える。何故か表情は明るかった。
「浮気してるんじゃねぇの」
「分かってる。弁護士がそろそろ仕掛けようかってさ、証拠も揃ってるしな」
俺の声に羽柴さんが応える。浮気相手は、阿部 順次。前務めてた会社の上司だと言う。羽柴さんがニッと笑みを浮かべた。
「俺、×1なんだ。何かあったら相談乗るよ」
「そうなんだ。吃驚したぜ。何かあったら頼むな」
俺の言葉に羽柴さんが応える。この人の力になりたい。マジに思った。季節が巡る。晩春を迎えた。幼い緑の間から木漏れ日が差している。プレゼンの日を迎えた。人の事だけどドキドキしている。今リビングでエスプレッソを飲んでる。羽柴さんからのメールが着信した。
”阿部 順次に慰謝料300万請求。澪さんの父親が橋場さんと弁護士に罵倒し続け、謝罪も無かった。その為澪さんに慰謝料増額で400万請求。財産分与無し。使い込み金は返済して貰う事になったよ。色々力付けてくれてありがとう”小一時間程経過する。インターホンが鳴った。
「ハイ」
「俺っす」
俺の声に羽柴さんが応える。俺はドアを開けた。
「両親が挨拶したいって……」
羽柴さんが言う。ご両親が会釈してくれた。玄関に入って貰った。俺も頭を下げる。玄関に入って貰った。
「色々相談に乗ってくれてありがとうございます」
羽柴さんの父さんが声にする。菓子折を渡された。
「これからも息子の事を宜しくお願いします」
「とんでもないです。俺のほうこそ宜しくお願いします」
 優しそうな人だった。
「また連絡する」
「分かった」
羽柴さんの声に俺が応える。羽柴一家が帰った。週が明ける。時刻は6時。羽柴さんからメールが着信した。
”離婚届け出してきたよ”
直ぐに俺は返信した。
”お疲れ様、良かったら、来ないか。飯作ってるからさ”
仕事が終った。一目散に岐路に就く。家に着くと俺は料理を作り始めた。時刻が8時に迫っている。インターホンが鳴った。ドアを開ける。羽柴さんが立っていた。満面の笑顔を浮かべている。俺はリビングに通した。
「後で飲もうぜ」
「ありがとう」
羽柴さんの声に俺が応える。土産はバーボンだった。
「一騎君にも何か贈りたいな。欲しいものとか無いのか?」
「有るけど……無理だと思うからいいよ。今度ご飯でも連れてって貰えばさ」
羽柴さんの声に俺は応える。俺は言葉を濁していた。
「飯、出すな」
「おお、サンキュウ」
俺の声に羽柴さんが応える。俺は料理をテーブルの上に並べた。今、テーブルを挟み、向かい合って座っている。グラスにビールを注ぎ合った。
「離婚成立おめでとう」
俺が声を上げる。グラスにびーるを注ぎ合った。羽柴さんがメカジキに箸を付ける。口に運んだ。
「美味ぇ」
羽柴さんが声にする。涙を流していた。
「手料理久しぶりだから嬉しくなっちまった」
「こんなんで良いなら何時でも作ってやるよ」
羽柴さんの声に俺が応える。仄かな喜びが湧き上がってきた。食事が終わる。後片付けを済ませた。今、俺達はソファーに並んで座っている。焼酎のグラスを傾けた。
「なあ何で親身になってくれたんだ」
羽柴さんが声にする。俺は覚悟した。
「好きだから、さっき言わなかったけど欲しいのは羽柴さんなんだ」
「何となく気付いてた。俺で良いのか」
俺の声に羽柴さんが応える。俺は頷いた。

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[ 2018/12/13 17:27 ] 筋肉狂詩曲 | TB(-) | CM(0)

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