俺、田丸 柊太27歳の髭坊主。
ハウス凱と言う不動産屋で営業職に就いてる。学生時代は空手に励んでた。今はジムで鍛えてる。174㌢×72㌔のガタイ。この前、良い筋肉してるとイントラから言われた。嫁の直美と息子の湧と暮らしてる。残念ながら直美は訳有り物件だった。窃盗に物乞いを平気でする。その度毎に俺は謝罪に行く。俺はかなり疲れてきた。そして家事放棄。2ヶ月位前から殆どしなくなった。理由は不明。聞くとあいつはヒスるに違いない。だから俺が遣っている。自ずと家事能力は増してきた。
直美は週4日程パートで耳鼻科の受け付けをしている。だが家計には1円足りとも入れてない。この前、園で湧と一緒のクラスのママさんに言われた。ランチ代何度言っても払って貰えないと……俺は平謝りする。4人のママさんに飲食代+迷惑金を払った。
「ランチ代払っておいたよ」
「何で払ったの。奢ってくれるって言ったのに……」
俺の声に直美が応える。言葉に怒気が含まれていた。今年に入ってから直美を抱いていない。気持ち悪くて俺のが勃たないからだ。今、かなり悩んでる。会社の先輩に相談した。俺の先輩天宮 篤郎さん。去年の初夏、ハウス凱に務め始めた。先輩は天宮家の次男。お兄さんの匡史さんが急逝した。その為何れ先輩が後を継ぐらしい。匡史さんの愛息陸君を引き取り、育てている。先輩は敏腕の営業マンの先輩に教わることは多い。俺は尊敬している。俺の方が社歴は長い。だが俺は先輩と呼んでいる。 篤郎さんの彼氏は体育教師の成ヶ澤 慶悦さん。その子供の5歳の創君と4人で暮らししている。2度家に行った。ほのぼのとしている。創君と陸君は血が繋がっていない。だけど本当の兄弟のように見えた。先輩さんと慶悦さんは即ち
ゲイ。うちとは違い、幸せのオーラを醸し出している。窃盗と物乞いを続ける直美。俺は既に念書を6枚書かされた。迷惑料、慰謝料の類も払っている。もう一切関わらないと……離婚も含めて考えている。先輩に財産管理だけはしっかりしとけと言われた。通帳を確認。今日預金、俺の結婚前預金のかなりの額が無くなっている。直美は反省してない。自分は全く悪くないと言う。先輩離婚に強い弁護士を紹介して貰い、面談してきた。弁護士が親指を立てている。力強い視線を送ってきた。街の桜の木が満開になっている。今日はハウス凱の定休日。ジムに行って1時に帰ってきた。厚焼きトーストとエビグラタンそれにサラダとスープ。俺は遅めのランチを摂りながら先輩からのメールを見ていた。”今日サンドイッチを泥されたよ。失礼なのは分っている。だがもしかしてお前の奥さんかと思ってメールした。違うことを願っている”添付ファイルを開けた。俺は驚愕する。紛れもなく直美と湧だった。またやらかした直美。今度やったら離婚と言ってあるし、念書も取ってある。俺は急遽、先輩の家を訪ねた。今、先輩ちのリビングでテーブルを囲んでいる。成ヶ澤さんが映像を流した。直美
が怒声を上げてる。俺は土下座した。ハウス凱の次の休業日に話し合いをする。夜、直美と湧が返って来た。俺は問い詰める。だが白を切られた。直美の両親はこの事を知ってるし、一緒に謝罪に行った事もある。諌めても直美は聞く耳を持ってない。罪の意識が皆無だからだと思う。多分直美は話し合いを拒否する。その為俺んちで行なうことにした。くしくも水曜は耳鼻科は定休日。直美はパートには出ない。水曜日の朝を迎える。インターホンがなった。
「ハイ……」
俺が声にする。何かドキドキしてきた。
「柿沼です」
「今、開けます」
義父さんの声に俺が応える。俺はドアを開けた。
「朝飯出来てますからお掛けになってお待ちください」
俺が言う。義両親が頷く。席に着いた。今日のメニューはワンプレートご飯。湧の好物のオムレツも添える。料理を運び、俺も椅子に掛けた。
「ホントに直美は何もしないのね」
義母さんが声を上げる。直美は不貞腐れてた。
「何しに来たのよ」
「湧に会いに来ただけだ。それなら朝御飯でもって柊太君に言われてな」
直美の声に義父さんが応える。先輩、俺の両親、成ヶ澤さん、社長夫妻。続々と関係者が見える。社長の奥さんが湧を連れ出してくれた。
「な、何よ」
「お前サンドイッチ泥棒したろ。相手が悪すぎた。俺の会社の先輩で何れ後を継ぐ人だよ。
その話し合いに来てくれたんだ」
直美の声に俺が応える。直美は立ち上がり逃げ出そうとした。義母さんが鬼のような形相になっている。リビングの出入り口で義母さんは直美を捕らえた。
「分かったわよ」
直美が声にする。席に着いた。
「直美さん、貴女は俺達のランチタイムを壊し、サンドイッチを盗みましたね」
「いっぱいあるから貰って上げただけよ」
先輩の声に直美が応える。直美が先輩を睨み付けてた。
「分かりました。実はあの時ビデオ撮影してたんです。気付きませんでしたか」
先輩さんが言う。直美が俯いている。ノートパソコンから映像が流れ始めた。前にもみたけど2つのロールパンサンドを盗み1つを湧に渡そうとしている。だが湧は拒否。湧が直美に目を遣った。
「ママ、泥棒は駄目だよ」
湧が声にする。湧の目からは涙が溢れてた。
「違うのこれは捏造よ。自分達だけ食べてズルい。子供が可哀想。家計が苦しいの。助け合いでしょ」
直美が大声で喚く。暴れ始める。義父さんが押さえ付けた。
「いい加減にしろ」
成ヶ澤さんが声にする。直美が成ヶ澤さんを睨み付けた。義母さんが立ち上がる。直美の頬に強烈なビンタを喰らわしてた。
「何が貰って上げるだ。もし言うなら恵んでくださいだろ。子供が可哀想だと、お前みたいな親がいるから可哀想なんだ。湧の涙の意味分かるか」
義母さんが泣きながら怒鳴る。また直美にビンタしてた。
「田丸、お前家計苦しいって幾ら渡してるんだ」
「家賃、光熱費別で20万す。2人のスマホ代も俺の口座から引き落とされてます」
先輩の問いに俺が応える。先輩が直美に目を遣った。
「充分だろ。それにお前も働いている。何に使ってるんだ。お前のヴィトン売ればサンドイッチくれぇ買えるだろ」
成ヶ澤さんが怒声を上げる。直美は黙殺した。
「助け合いって貴女は助けて貰うだけで俺達には何もしてないっすよね」
先輩が声にする。直美は頷いた。
「自分が悪い事をした事を理解し、猛省出来ますか。出来るのであれば穏便に済ませます」
「ごめんなさい」
先輩の声に直美が涙しながら応える。だが謝ってるようには見えなかった。
「泣けば良いってもんじゃねぇよ。女の涙に俺は負けねぇよ」
俺が言う。其々の両親目を遣る。頷いていた。
「約束通り離婚だな」
俺が言い切る。直美はうな垂れていた。
「離婚だけは勘弁してください」
直美が言う。俺は大きく首を横に振る。其の時弁護士が入ってきた。直美に目を遣る。弁護士が席に着いた。
「田丸 直美さん貴女は旦那さんとの約束覚えてますか」
弁護士が静かに言う。直美が黙殺する。弁護士が念書を提示した。直美がギャーギャー喚く。義母さんが立ち上がり、直美を殴ろうとする。弁護士に止められた。
「離婚に応じられますね」
弁護士が言う。直美が小さく頷く。1枚の書面が出された。俺が出した直美への制裁は、慰
謝料、財産分与無し、使い込み金の返済、親権は俺。それに金は自立して自分で払い実家
頼らない事。弁護士先生が伝えてくれた。新居の入居費用は俺持ち。その代わり1週間以内で出ていって欲しいと……直美は離婚届と示談書にサインした。
「お義父さん、お義母さん色々手助け頂いて有難うございます。湧は貴方達の孫に違いありません。何時でも会いに来てください。俺もお伺いしたいです。何時までも俺の義父さん、義母さんで居てください。宜しいでしょうか?」
「ありがとうございます」
俺の問いに義父さんが答える。義母さんが嗚咽してた。翌日、離婚届けを提出。あいつは柿沼 直美に戻った。俺の見せた4枚の図面。直美は1Kの部屋を選んだ。契約者は直美。保証人は保証会社に依頼した。不要な家具家電は処分。引っ越し業者が来た。積み込んだ直美が必要な家具家電に私物。直美が湧に目を遣った。
「湧、ゴメンね」
「煩ぇ。早く出てけ。泥ババァ」
直美の声に湧が怒鳴る。4歳の子供にここ迄言わせる直美。切なさを覚える。トラックが動
き始めた。スマホが義父さんからの電話着信を報せる。直美が絶縁されたと言う。俺達の新居は先輩さんちの裏手のマンションに決めてある。既に新たな家具家電は設置。私物だけ車に詰め込み新居へと向かった。新居に着く。ドアを開け中に入った。
「琥太郎は……」
「もう直ぐ来るよ。でもホントに大丈夫なのか。寂しくなったらパパの所においで……」
湧の声に俺が応える。湧は頷いた。琥太郎、ポメラニアンの♂の子犬。この前湧と一緒に選んだ。寝室は琥太郎と一緒が良いと言う。インターホンが鳴った。ドアを開ける。青年が立っていた。
「お届けに上がりました。何処に置いたら良いでしょう」
「こちらにお願い出来ますか」
青年の問いに俺が答える。ハウスに犬用ベッド。傍らには湧のベッドと机が置かれている。
琥太郎に首輪を付けた。キャンキャンキャンと可愛い声で琥太郎が泣く。湧が琥太郎と遊んでいる。3頭のオスの暮らしが始った。時が流れる。青葉の季節を迎えた。今、俺んちのリビングで先輩と成ヶ澤さんとテーブルを囲んでいる。傍らで琥太郎と遊ぶ3人の子供達。先輩が俺に視線をぶつけてきた。
「女紹介してやろうか?」
「要らねぇっす。湧も琥太郎もいるし女は懲りたかもっす」
先輩の問いに俺が答え。先輩が鋭い目で見てきた。
「男はどうなんだ」
「えっ男っすか」
先輩の声に俺が応える。俺は動揺した。
「今度の日曜、俺達飲み屋の
六尺デーに行くんだ。嫌悪感ねぇんなら行ってみないか」
「えっ、うん」
先輩の声に俺は応える。俺は思う。嫌悪感なんて有るはずはない。先輩達を見てるのだから……
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