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俺達の疾走①

 俺は伊東 巧巳 15歳の中坊。1年前に父親は病いで他界した。永悟と言う2つ下の弟がいる。俺と違って頭がイイ。保険と蓄えは多少はある。だがそれだけでは厳しい。ガキの俺でもそれは感じ取れる。父親が他界してから母親は仕事を始めた。日中は派遣で事務、夜はビル清掃。単発で入る介護補助も受けている。帰宅してからは家事を熟してた。それでも生活が大変なのが手に取るように分る。母さんが日毎にやつれていく。1日で退院したが母さんは過労で倒れた。俺は深慮する。そして俺は決意した。今、3人でテーブルを囲んでいる。俺は母さんを真っ直ぐに見た。
「俺、明日から夕飯作るよ。帰ってから炊事するの大変だろ」
「えっ」
俺の声に母さんが応える。母さんは驚愕の表情を浮かべてた。
「俺もお手伝いする。塾も辞めるよ」
永悟が声にする。母さんが涙ぐんでた。
「お、お前たちありがとう」
母さんが声にする。ボロボロの財布から千円札を1枚渡された。翌日登校する。顧問には止められたが、水泳部も辞める事にした。授業が終わる。一目散でスーパーに向かった。だが俺は何をどうして良いのか分からない。キョロキョロしている。そんな時1人の小母さんが近づいてきた。名札には浜田と記されている。俺に目をくれた。
「どうしたの?」
浜田さんが声にする。穏和な笑顔を浮かべてた。
「実は……」
俺が声を上げる。俺は経緯を話した。
「そう偉いわね。私に任せなさい」
浜田さんが声にする。野菜の見分け方、保存方法、配布してるレシピ。色んな事を教わった。
「チョット待っててね」
浜田さんが声にする。彼女は扉の向こう側に消えた。程なくして出てくる。ビニール袋を手にもっていた。
「これ廃棄予定の調味料よ。持ってきなさい。内緒よ。あんた頑張ってるからね。応援してるわ。もう直ぐタイムセールで鷄の胸肉が半額になるからね」
小母さんが声にする。親切な人に出会えた俺。至福感を覚えた。見切り品の野菜等と鶏胸肉を購入する。俺は帰路に就いた。今、キッチンに立っている。レシピを見ながら下拵えを始めた。永悟は掃除している。テーブルに置かれた母さんのメモ。帰宅は9時位らしい。俺と永悟は風呂を済ませた。俺は仕上げに掛かる。時刻は9時。母さんが帰ってきた。
「ただいま……」
「お帰りなさい。飯もう出来てるからさ」
母さんの声に俺が応える。テーブルに料理をならべた。今夜の献立は鶏胸肉の野菜ロール、もやしのナムル、白飯にワカメの味噌汁。キャベツの即席漬けを添えた。母さんが野菜ロールを口にする。母さんの顔が綻んだ。
「美味しいわ。お金間に合ったの?」
「うん、半分位残ってるよ」
母さんの問いに俺が応える。俺は今日の事を伝えた。
「兄ぃちゃん料理上手ぇな」
永悟が声にする。家族の笑顔。俺にとって最高のスパイスだ。時が流れる。或る日母さんと一緒にスーパーに行った。浜田さんと遭遇する。俺は会釈した。
「母さん、浜田さんだよ」
俺が声にする。母さんと浜田さんの視線が交差した。
「いつも息子がお世話になってるようでありがとうございます」
「とんでもないです。親孝行な息子さんですね」
母さんの声に浜田さんが応える。浜田さんからレシピを貰う。今日のお買い得情報を教えてくれた。何時の間にか俺は常連になっている。店長を始め色んなスタッフの方々共仲良しになった。浜田さんは食品担当の社員。改めてしった。季節が巡る。春を迎えた。桜が満開になっている。母さんの反対を押しきって俺は中卒でスーパーにバイトとして入社した。仕事は楽しい。仲間達も親切にしてくれる。俺は必至に勉強した。時が流れる。俺は野菜ソムリエの資格も取得。オリジナルレシピも考えた。
「どうっすか?」
「凄く美味しいわ」
俺の問いに浜田さんが応える。浜田さんは親指を立てていた。YouTubeでも動画配信している。登録者もそれなりに増えてきた。今、広告収入も10万前後はある。発酵食品ソムリエ、スイーツコンシェルジュ。更に2つの資格を取得した。季節が巡る。18歳の春を迎えた。朗報が届く。バイトから生社員になった。YouTubeも登録者が増えている。収入も安定してきた。合コンに誘われる。1人の女の子とLineを交換した。メッセのやり取りをする。スーパーの社員で中卒、低賃金。それだけでLineはブロックされた。出会い系に知人からの紹介。出会うチャンスはある。同じような理由で2人の女の子に拒絶された。その度毎に底知れぬ寂しさが胸に来る。女はいらない。俺は仕事に没頭した。俺の努力が認められる。23歳で本部の商品開発部に抜擢された。
毎日が忙しい。デパ地下に負けない商品を心掛けている。数店舗にはフードコートを設置した。惣菜コーナーだけでなく其処でも販売している。ある日部長に呼ばれた。
「岩谷 渉(わたる)の舌鼓を打つから出演依頼の申し込みがあったがどうする」
「勿論良いです」
部長の声に俺が応える。岩谷 渉人気のフードライター。TV番組も持っている。そう言えばYouTubeのコメントをWIと言う人からを貰った事がある。俺は該当店舗を教えた。WIもしかして……メニューはイタリアン茄子とカツオの冷製パスタ、塩麹を活用したペペロナータ。どちらも上層部の審査は通っている。季節は晩夏。取材の日を迎えた。今、部長とテレビ局に向かっている。緊張してきた。テレビ局に入る。楽屋に案内された。最終の打ち合わせを済ませる。ADが入ってきた。
「そろそろ準備お願いします」
ADが声にする。俺達は動き始めた。スタジオに入る。岩谷さんと目が合った。
「お忙しい所申訳ありません。本日は宜しくお願いします」
岩谷さんの声にする。彼は穏和な笑顔を浮かべてた。
「こちらの方こそ宜しくお願いします」
俺と部長の声が重なる。岩谷さんと部長が席に着く。俺は調理スペースに立った。
「今日はDLマートの商品開発部の部長さんと伊東さんにおいで頂いてます。では調理スタート!」
岩谷さんが声を上げる。部長が会釈した。今日の撮影は生中継。下手をこく訳にはいかない。俺は料理始めた。時が僅かに流れる。完成した料理をみんなの前に並べた。岩谷さんが料理を口に運んでる。目が細くなっていた。
「凄いクオリティですね。スーパーのお惣菜とは思えないです。流石料理界の若き匠ですね」
「ありがとうございます」
岩谷さんの声に俺が応える。他の出演者からも絶賛の声を頂く。料理界の若き匠なんて言われてるとは知らなかった。無事に取材は終わる。俺達はテレビ局を後にした。切ってたスマホの電源を入れる。物凄い量のLineと電話の着信が俺を振った女共から入っていた。Lineを開けてみる。内容は上目線の復縁メッセ。俺は失笑する。お前なんか大っ嫌い。どの口がいってるんだ。この手の平返しがよぉ。俺は返信した。
「どうした?」
「俺を中卒の底辺って振った女達から復縁したいってメッセですよ」
部長の問いに俺が応える。俺は女共の電話を着信拒否。Lineはブロックした。俺達は帰社する。拍手喝采された。惣菜の売上が凄い事になっている。連日俺の考案した惣菜、スイーツは3時過ぎには完売していた。数日が経過する。帰りの通勤電車で事件が起きた。ギュウギュウ詰めではないが結構混んでいる。俺は電車のドア脇に手摺りを握り立っていた。股間に手が這ってくる。犯人は金髪の女。暫くして俺の右手が握られる。其のまま手を上げられた。
「胸触らないでよ」
女が声を上げる。俺は唖然とした。
「うちの娘に何するんだ。証拠もある。この変態がぁ。慰謝料払え」
母親とおぼしき女が声を上げる。彼女は勝ち誇った笑みを浮かべてた。俺は両側から女共に腕を掴まれる。次の駅で降ろされた。
「チョッと待て。そいつは犯ってねぇ。逆にやってるのは女の方だ」
後ろから野太い声が聞こえる。俺は振り向く。俺は驚愕する。
声の主は岩谷さんだった。乗客達が騒めいている。俺達は大勢の人に囲まれた。
「岩谷さんですよね」
妙齢で上品な女性が声にする。岩谷さんが頷く。スマホ動画を流し始めた。俺が触られてる所から女が手を上げてる所迄映っている。一方女共の証拠は俺が女に手を握られてる画像。俺が触ってる画像は無かった。騒ぎに気づいた駅員が走り寄ってくる。誰かが通報したのか警察も現れた。警察官が2つの証拠を確認している。渋い表情を浮かべてた。
「後は署で聞きましょう」
警察官が声にする。俺と岩谷さんは素直に従う。女共は何やらヒスってる。俺達は連行された。別々の取調室で事情聴取を受けている。岩谷さんが警察官に目を遣った。
「念の為微物検査とDNA検査お願いします」
「分かりました」
岩谷さんの声に警察官が応える。俺は2つの検査を受けた。
「色々お手間掛けてありがとうございます」
「とんでもねぇよ」
俺の声に岩谷さんが応える。俺達は警察署を後にした。俺は思惟する。何故にこんなに親身になってくれるんだろうと……数日が経過する。検査結果の結果俺は白と判定された。西の空に陽が傾き始める。
西日
俺は岩谷さんに電話した。
「色々お世話になりました。ご飯奢らせてください」
「もう少しで仕事終わるけど今日でも良いか」
俺の声に岩谷さんが応える。俺は了解と話した。俺は今待ち合わせの場所に向かっている。だが何故か時めきを覚えた。隠れ家的和食処の暖簾を潜る。岩谷さんの番組に出演したことがあるらしい。大将と女将が岩谷さんに挨拶している。俺達は奥の席に着く。ジョッキビールが運ばれてきた。
「おめでとう」
「ありがとうございます」
岩谷さんの声に俺が応える。俺達はジョッキを触れ合わせた。色んな事を語り合う。岩谷さんと俺はタメ。仕事の傍ら格闘技道場に通っていると言う。俺達は話しながら手の込んだ和食を堪能。酒を楽しんだ。ぼそっと言った岩谷さんの一言が気になる。俺女駄目なんだよなと……俺達は店を後にする。手を引かれ電柱の影に隠れた。
「キスしてイイか」
岩谷さんが声にする。俺は頷いていた。

大噴火

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涙の雫 (S)

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大型犬潮吹きダイスケ

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[ 2021/05/15 22:14 ] 俺達の疾走 | TB(-) | CM(0)

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